人生最期の言葉
「人生最期の言葉集」
何気なく立ち寄った古本屋で僕はこんなタイトルの本をみつけた。
本を開いてみると、多くの人の人生最期の言葉が1ページに一文ずつ記されていた。
「今までありがとう」
「本当に楽しかった」
「幸せだったよ」
「ごめんね」
「コーヒーが飲みたい」
「もっと……」
「タバコが吸いたいなあ」
「もう一度、逢おうな」
「やっと、死ねる……」
「まだ……」
「死にたくない!!!」
そのほかにも多くの人の人生最期の言葉が記されていた。
病院で死にゆく人の最期の言葉。
自宅で家族に見守られながら死にゆく人の最期の言葉。
人生に絶望し、ビルの屋上でつぶやいた最期の言葉。
突然の事故に遭い車の中でうめいた最後の言葉。
誰もが想像するであろうありきたりな言葉が多かったが、かぎかっこのついていないこの言葉を見たときに僕は
とめどなく涙が溢れてきてしまった。
”この世に生まれたかった……”
母親の胎内でかき消された、声にならない最期の言葉だった。
人生最期の言葉