真夜中の紅茶

わたしは美羽という名前の16歳の高校一年生。
この名前がお気に入りで、淡いピンクの綺麗でふわふわしてる翼が生えてそうだからかわいいって思ってつけたんです。本当の名前は違うんです。
これはわたしのハンドルネームだから。
わたしはずっと家族に褒められて甘やかされて育てられました。
兄弟が四人いるのです。だけどわたしが唯一英語が出来たり、美術の評価がよかったから家族全員がわたしを過大評価していました。
成績表も頑張ってとって「あなたが兄弟の中で一番良い」とか「将来楽しみ」とか期待されていました。
でもわたしはみんなの期待に応えようと頑張ってはいなかったのです。
必死で頑張ろうとしないでできたテストを良いと評価され育ったため鼻が高くわたしは子供ながらに色々な人間を見下し始めたのです。
高校入試も余裕をたっぷりもって合格しました。
新しい制服新しい環境。新しいクラスメイト。
新しいのは今までの中学時代とは違って、不良がいないことです。
高校入試というふるいにかけられて合格できたものだけが入れる校舎は気高くそこに席があるというのは16歳のわたしでも誇り高いものなのです。
この頃のわたしは鼻が高く可愛げがない女の子でした。わたしはクラスの雨野さんと仲良くなりました。
雨野さんは人見知りで自分から声をかけることが苦手でした。わたしは雨野さんに話しかけました。
一人きりの彼女にわたしから話しかければ立場が優位になると思ったからです。
雨野さんはすぐにわたしに心を開きました。
雨野さんは片親で弟がおり、面倒をみながら勉強できる時間を大切にして必死でこの高校に入ったといことでした。
そんな彼女をわたしはどこかで彼女を見下していたのです。
雨野さんはどん臭くておかっぱで眼鏡をかけており見た目も地味だったからです。
クラスでも疎まれていました。
わたしは優越感に浸りながら彼女と接していました。
しかし雨野さんは彼女なりに精一杯努力しているのが分かりました。
わたしは近くにいるのでそれがよく分かりました。
覚えることが苦手だからいつもより30分だけ早く起きて英単語を覚えてるんだとか、クラスマッチで迷惑をかけないように自主練をしたりだとか、わたしはそこまで努力しているのがかっこ悪いと感じていました。
その努力を雨野さんはいいません。こっそりしているのです。
同い年の少女は普通ならもっと自慢したり自信満々になったりしてもおかしくないです。
しかし彼女は決して辛そうな表情も見せることなくひたすらまっすぐにひたむきに成長していくのでした。
そんな姿がクラスでも認められ見た目は地味でありながらも一目おかれるようになったのです。
わたしは妬ましかったです。
わたしの周りには気づけば雨野さんだけでした。
わたしはクラスのみんなを見下していたからです。
どんなひとでも欠点があることをいいことに見つけて嫌いになっていずれはわたし自身も嫌いになっていったのでした。
雨野さんとわたしは一緒にいましたが、性格も状況もクラスメイトの評判も正反対の立場だったのです。
わたしは恥ずかしくなっていきました。
わたしよりはるかに下にいた雨野さんが…。
ある日、雨野さんがわたしに一緒に帰ろうと言ってきたときわたしは大声で言いました。
「ふざけないで!わたしが弱い立場だから同情しているんでしょ!かわいそうだなんて思って接してこないで」
そう言い放ちわたしは一人で走って帰りました。
わたしは弱いのです。
努力して勝ちとるものと努力しないで得たものはちがいます。
雨野さんとわたしは同い年で体重も身長もさほど変わらないなのに全く精神が違うのでした。
わたしは雨野さんがいないので一人で行動せざるを得なくなりました。
ひとり。
何が辛いかというと孤独自体ではなく、孤独だといことを多くのひとに見られることが嫌だったのです。
一人で行動している自分はかっこ悪く惨めで受け入れたくない事実です。
誰も近寄ることもありません。
自分から一人になるのと一人になってしまうのとでは全く違います。
毎日が白黒の様に荒んでいきました。
家族もわたしの異変に気付きました。
でも学校にいって勉強して結果を出せ!もっともっと頑張れ!そんな奴らに負けないために勉強しろ!という言葉しかありませんでした。
わたしは一人になったとき、寄り添って欲しかったのです。
わたしの気持ちを汲んで辛さを分かって欲しかったのです。

真夜中の紅茶

真夜中の紅茶

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-12

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