蝶々雲
言葉を降らせる雨雲が
己の内に在るというのに
雨は降らなかった
永延と眺め続けたが
一向に雨の降る気配はなく
僕は虚無を憶えた
愛おしいと咽ぶ感情も
麗しいと謳う憐憫も
まるで硝子の向こうの出来事だ
何もかもが知らぬ顔で
自分というものは
何処まで行っても形がなく
目を凝らしたとて姿もなく
故に言葉が降るのを待つと言うに
雨は一向に降らなかった
唯々予感のみを孕ませ
目に痛い程の厚さを持った
蝶々雲だけが
唯々空に浮かぶばかりである
蝶々雲
言葉を降らせる雨雲が
己の内に在るというのに
雨は降らなかった
永延と眺め続けたが
一向に雨の降る気配はなく
僕は虚無を憶えた
愛おしいと咽ぶ感情も
麗しいと謳う憐憫も
まるで硝子の向こうの出来事だ
何もかもが知らぬ顔で
自分というものは
何処まで行っても形がなく
目を凝らしたとて姿もなく
故に言葉が降るのを待つと言うに
雨は一向に降らなかった
唯々予感のみを孕ませ
目に痛い程の厚さを持った
蝶々雲だけが
唯々空に浮かぶばかりである
蝶々雲