蝶々雲

言葉を降らせる雨雲が
己の内に在るというのに

雨は降らなかった
永延と眺め続けたが
一向に雨の降る気配はなく

僕は虚無を憶えた

愛おしいと咽ぶ感情も
麗しいと謳う憐憫も

まるで硝子の向こうの出来事だ
何もかもが知らぬ顔で
自分というものは
何処まで行っても形がなく
目を凝らしたとて姿もなく

故に言葉が降るのを待つと言うに
雨は一向に降らなかった

唯々予感のみを孕ませ
目に痛い程の厚さを持った
蝶々雲だけが
唯々空に浮かぶばかりである

蝶々雲

蝶々雲

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-12

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