zxc

夢と現実の交錯。

降り積もる、不安と闇。

有馬のその先は?

さぁ、一緒に夢に潜りましょ?

『ごめんなさ~い!!きゃあ!』

暗闇から現れたねこが転ぶ。

「だ、大丈…」

『旦那様っ』

「は、はい…」

『そやつのような失礼極まりない者には手を差し伸べないで下さい。』

冷たい目で、一瞥をくれ、有馬に向き直る。

『どうか旦那様、こやつめの無礼、御許し下さいませ…』

深々と頭を下げる。

『も、も、もうしわけございませんでしたっ…』

「い、いや、いいよ別に…遅れることは、ほら、よくあるし…」

『そうはいきません、旦那様。旦那様を御待たせした挙げ句、そのお目に、醜態を曝した…。何か罰を…』

「いや、別に、何も…」

『しかし…』

「~…じゃあ…。名前を教えて?」

『そんな…嗚呼、なんとお優しい方なのでしょう…。私の名は、カモミールガットと申します。以後、お見知りおきを…』

しゃらりと装飾品の軽い涼しい音でお辞儀する。

「カモミールガット?」

『はい。』

「可愛いね。」

カモミールガットは、深紅の眼を細めて笑う。

『有り難き御言葉、嬉しゅう御座います。』

「そんな堅苦しくしないでいいよ。二人とも。」

『あっ、そう?』

からりとカモミールガットは態度が豹変する。

『カモミール!旦那様に失礼です!』

「いいよウサギ。ね、ねこちゃん。」

『ありがとう、パドゥレ。』

「パドゥレ?」

『私たちはオィジェスの事をそう呼んでいるの。』

「オィジェス?」

『…本当に知らないの?』

「うん。今朝、ウサギに会ったのが初めて。」

『そう、失礼したわ。それじゃあ説明していくわね。』

カモミールガットは、耳をピョコンと動かして手を振る。

さらさらと砂が集まって、机と椅子、大きな紙を形成する。

『それでは、まず、ここのことをシュワツと言います。そしてこの大きな木が、マザー・プシェア。全ての物は、マザー・プシェアから生まれるの。私も、ルドロフカニヒェンさんも。花も草も。』

こつこつと靴の踵を鳴らしながら、ルドロフカニヒェンが近づいてくる。

『旦那様もで御座います。万物はマザー・プシェアから生まれ、死し物はオスタチェネへと逝きます。』

「俺も?」

『はい。マザー・プシェアには、何十年に一度…クウィットナラジーという花が咲きます。その光はプシュフキへと飛んでいき、旦那様の母上様のまだ生まれていないお子様、旦那様に宿るので御座います。』

『そうなの。ふわふわきらきらしてて、綺麗なのよ。そして、パドゥレの正式名称はルディエナラジーと言うの。』

「…要するに、俺は特別な存在って訳?」

『はい、旦那様。』

「ふうん。…なんでウサギは俺を旦那様って呼ぶの?俺、まだ結婚してないし、成人もしてないのに。」

『嗚呼、ルディエナラジーは、マザー・プシェアから生まれると同時に、マザー・プシェアの夫になるのです。プシュフキでも、父なる大地母なる海…のようなことは言いますでしょう?』

「言い慣わしみたいな?」

『ええ。でもね、パドゥレ以外のプシュフキの世界の生き物は歓迎されないのが普通なの…』

「どうして…」

『こんな、言い伝えがあるからよ…』

カモミールガットは、地べたにちょこんと座り、ゆっくり語りだした。

《昔々、太古の神々たちが、マザー・プシェアの芽を育てていました。
マザー・プシェアの芽は、すくすく育っていき、知恵をつけ、教養をつけ、小さいけれど立派で綺麗な木になりました。
神々達が、マザー・プシェアの木を、自慢したくて神々の集まる日に、マザー・プシェアを皆に紹介したのです。
するとたちまち、美しいマザー・プシェアの木は褒められ愛でられ可愛がられ…。
すっかり気分をよくしたマザー・プシェアは、神々達に、『1つだけ願いを叶えてあげましょう』と唱えます。
神々達は悩んだ挙げ句、色のなかったシュワツに『空を青に染め上げたい』『それなら、海も同じく、青にしよう』。太陽は、ただの光でしかなったので『太陽を暖かい光に変えたい』。そしてら『私達の、平和な幸せが欲しい』。
神々は、みんなの、世界の事を想って願いを叶えてもらいました。
最後の神、ウォルド神は『私に何にも破られない最強の盾と、何をも貫く最強の矛を』。
周りの神々は目を疑いました。
どうしてそんなものを欲しがるのだ、と。
マザー・プシェアは渋々にも願いを叶えました。
そして、「神々の日」に、最強の盾と最強の矛を手に入れた神、ウォルド神は、他の神々らを襲いました。
神は一人で十分。
そう言いたかったようでした。
それを見て、マザー・プシェアは激怒しました。
マザー・プシェアはウォルド神を封印し、心を改めるまで、洞窟に閉じ込めました。
しかし、ウォルド神は逃げ出しました。
そのウォルド神のまつえいがヒトだと伝えられています。

『…なので、シュワツの者は、プシュフキの者を、拒むようになってしまいました、オシマイ。』

やれやれといった様子で肩を竦めるカモミールガット。

『…ただの、昔話なのに…。プシュフキのヒト逹、優しいって聞いてるよ?ホントはどうなの、パドゥレ…』

「優しい人もいるけど、それ以上に優しくない人がいるとおもう。」

『…』

カモミールガットは口をつぐんでしまった。

「ごめんね。」

『とんでもない…、私が、ちょっと過ぎた妄想をしていただけだわ。』

ニコッと笑って、視線を落とす。

暫く、沈黙が続くと、視界がぼやけて来る。

「あ…あれ…?」

『嗚呼、パドゥレ、もう行ってしまうのね…。また会いましょう、さようなら、パドゥレ。』

カモミールガットはそう言って、手を振る。

『旦那様、それでは、また…。』

ルドロフカニヒェンも御辞儀をする。

瞬く間に、現実に戻った。

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『こんにちは。

 作者は頑張っているようです。

 多忙な日々の中、合間を塗って書き溜めては

 ここへと吐き出しております。

 更新が亀の歩みで御座いますが、どうぞ、ゆっくり

 お待ちになって下さいな。

 その間、私のとっておきの紅茶を淹れましょう。

 さぁさ、お座りになって下さいな…』

ルドロフカニヒェン

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  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-10

CC BY-NC-ND
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