それでもスキでした。

+*入学式*+

ガラガラッ。
ドスンッ。

「優!起きて!朝だよ!」

夕凪高校1年生。
矢野 ともみ。

「いってぇ・・・。」

舞岡中学校3年生。
高田 優斗。

朝早く、あたしは自分の部屋の窓から隣の家の幼馴染、優の部屋の窓へ飛び移った。
バランスを崩し、優が寝ているベッドの上に見事にダイブ。

「ごめんごめん。それよりさっ、見て!」

「・・・何を?」

あたしはすかさず優の脇腹に蹴りを入れた。

「何って、夕凪高校の制服に決まってんでしょ!鈍感!あたし、今日から高校生なんだよ!」

そう。
今日はこれからあたしが通うことになった夕凪高校の入学式。

「・・・あぁ。悪ぃ悪ぃ。うん、似合ってるよ。それより、早く準備しねぇと遅刻すんぞ。」

「うん、早く朝ごはん食べよ!優も早く!」

「分かってるよ・・・。」

あたしの親は共働きで、食事のほとんどは優の家でと決まっている。

「はい、優ママ!今日はクレールのパン持ってきたよ♪」

「いつもありがとね。」

「ううん!ともみがお世話になってるんだから!」

「うふふ。さぁ、早くご飯食べちゃいなさい。」

「はーい。」

テーブルの上にはいい香りのトーストとヨーグルトとベーコン、それから優ママ特製のブルーベリージュース!

優ママはフルーツを使ったジュースを作るのがすごく上手なのっ。

「おいひー♥」

ん~。
朝からこんなに美味しいものが食べれるなんて幸せっ。

「いってくる・・・。」

「えっ、ちょっ待って!あたしも一緒に出る!」

優が席を立ったため、あたしもあわてて席を立ち荷物をまとめて玄関へと向かった。

「優ママ、ごちそう様!美味しかったよ!行ってきます!」

「行ってらっしゃい。気を付けなね。」

「はーい。」

はぁ。
今日から高校生かー!

楽しみっ♪

「そうだ!今日から優は最高学年だよねー!楽しみ??」

「別に。なんもかわんなくね?」

「変わるよ!」

「たとえば?」

「ほら、あれだよ!あのー・・・。あっ、先輩がいなくなる!」

「あとは?」

「えっとー・・・。色々だよ!」

「ははっ。それだけじゃん。」

「笑うな!そのうち違いが分かるの!」

「はいはい。じゃあな。」

「えっ?なんで?」

「ばーか。お前はもう舞中じゃなくて凪高だろ。」

「あっ、そっか!」

「じゃあな、気をつけろよ。」

「うんっ、バイバイ!」

なはは。
危ない危ない。

優がいなかったらあたし絶対舞中行ってたよ。

優がいてよかった。

「とーもみっ。」

急に後ろから抱きつかれた。

「望愛!おはよっ!」

「おはよーっ!」

抱きついてきたのはあたしの親友の
神崎 望愛 (かんざき のあ)。

167㌢の長身スラッとした体形、小顔美人。
まさしくモデルのような女の子。

「今日から高校生だねー。何か実感湧かないなぁ。」

「うんっ。あたしも!さっきなんて間違えて舞中行こうとしちゃったもん。優がいなかったらあたし確実に舞中行ってた。」

「あははっ。ドジ~。ともみってホント優斗君いないと何もできないよね~。」

「そんなことないもん!」

あたしたちはそんな話をしながら学校へ向かった。

クラス表は門の前で配布されていた。

あたしは・・・。

1年3組29番矢野ともみ

「3組だ。ねぇっ、望―――」

「ともみ!同じクラスだったよ!」

1年3組7番神崎望愛

「ホントだー!やったぁ!」

「宜しくね!ねね、ともみの前の出席番号の人ともみに名前そっくり!」

「ん・・・?」

1年3組28番矢田ともや

「わっ。ホントだー。ひらがなだ!」

あたしは思わずキョロキョロと辺りを見渡した。

どの人が矢田君かもわからないのに。

ドンッ。

「キャッ!」

ズサッ・・・。

「いったぁ・・・。」

急に後ろに人がぶつかってきて、あたしは転んでしまった。

膝からは血が滲み出ている。

「ちょっ、大丈夫!?ともみっ。」

「ぅん・・・。痛い・・・。」

「ちょっと!あんた、謝んなさいよ!!!」

望愛はあたしにぶつかってきた人に向かって怒鳴りつけた。

あたしも文句を言おうと振り返ったが

言えなかった。

その人物があまりにも美しすぎたから。

栗色の髪の毛にそれと同じ色をした透き通ったような瞳。
180㌢ほどあるだろうか。
スラッとした長身。

あたしは思わず見とれてしまった。

「あっ、ごめん!大丈夫!?・・・じゃないよな。立てる?保健室行こう。」

「えっ、あっ、はい。いてて・・・。」

あたしはその栗色君に肩を貸してもらい、保健室へと向かった。

「ひゅー。優しいねぇ、矢田くーん。」

周りにいた男子が冷やかしてきた。

「うっせ。てかお前らも謝れよ!押したのお前らだろ。」

「あっ。わり。ごめんなー。」

矢田君・・・。

この人が矢田君か。

なんてゆうか・・・その・・・
カッコいい人だな。

__________________________________

これがあたしとともやとの出会いだった。

ねぇ、ともや?

あたし、あんたに会えてホントに良かった。

あんたと過ごした毎日。

一日たりとも忘れられない。

本当に楽しかった。

あの頃は・・・。

__________________________________

+*優*+

入学式の日の帰り道。

あたしはすっかりともやと仲良くなり、お昼前に終わった入学式の後、
ファミレスでずっと喋っていた。

メンバーはあたしと望愛とともやと流星。

流星はともやの中学のときの親友で、やっぱり、類友というのだろうか。

ともやと同じように長身で、まぁいわゆるイケメンさんだ。

菊池 流星(きくち りゅうせい)

中学のときはほとんどの女子から支持を得ていて、モテモテだったという。

話はどんどん盛り上がり、もう現在時刻は6時を回っていた。

「夕ご飯何かなー。」

もうすぐ家に着く。

やっぱり今日もご飯は優の家。

そんなことを考えながら歩いていると、数㍍先に優がいることに気付いた。

「優!」

優は此方を振り返った。

「おぅ、とも。お帰り。」

「ただいま!優もねっ。」

「おぅ。」

そういって優は玄関の扉を開き、あたしが入るのを待っていてくれた。

「ありがと。」

「ん。」

優・・・身長伸びたなー。

「ねぇ、優。最近また身長伸びた?」

「あー、伸びたかも。」

「何㌢??」

「180過ぎくらい。」

でかっ!

「あーあ。前はあたしより全然小っちゃかったのにな。」

「とも。お前何年前の話してんだよ。小学生のときだろ。」

優はふっと笑って自分の部屋に入っていった。

何か、優最近大人っぽくなったな。

体も雰囲気も何もかも。

なんだかおいて行かれてるような気分。

「何か淋しいなー。」

優ばっか。

あたしはどうなんだろー。

「何が淋しいって?」

スウェットに着替えた優があたしの後ろから話しかけてきた。

「優が・・・。・・・へへっやっぱ何でもない♪」

「なんだよ?」

「んーん。」

大人っぽくなった・・・

何てゆったら調子のるし悔しいから今は言わないでおくっ。

「優ママー!今日の夜ご飯は何ーっ??」

+*メロンパンとハンバーグ*+


「俺、購買行ってくるわー。」

「あ、じゃあついでにあたしにも買ってきて。メロンパン。」

「メロンパンかよ。太るぞ。」

「うっさいわ。早く行って来い。」

「はいっ・・・。」

今ではともやは完全パシられ役・・・・

じゃありません。

今の会話は、はたから見たらひどかったかな。

まぁいいや。

「あー、お腹すいた!」

「あたしもー。3限目眠くて死ぬかと思ったわ。」

「あはは。望愛、もう目ェ死んでたよ。」

「うるさーい。」

望愛はすねたように頬をふくらます。

もう望愛はホント可愛い。

プリクラで変顔写真を撮っても悲惨なのはあたしだけ。

ま、それを見て友達は笑ってくれるからいいけどね♪

「ただいまかえりました!メロンパン隊長!」

「よくやった。・・・ってメロンパン隊長!?ちょっ、ウケるー!」

あたしは思わず吹き出した。

ともやも、近くにいた望愛も流星も。

「ちょっと待って。今お金出すから。」

「んー。」

あたしは自分のスクバと机の上に置き、財布を探す。

ん?
あれ?

「あ、やば。ごめん、今日お財布家に忘れてきちゃった。明日でいい?」

「いいよ、今日はおごったる。その代わり明日帰りにアイス奢ってー。」

「うっ・・・。アイスの方が高いじゃん・・・。」

「何か言った?」

ともやはにっこりと笑ってこっちを振り返った。

目が笑ってないよ、目が。

「何も言ってないでーす♪」

「ならよろしい。」

何かさっきと立場逆転したなー。

「え、明日の帰りアイス食べに行くのー?ねね、望愛たちも行こーよっ、流星!」

「おぅ!行こ行こー♪」

お、何か盛り上がってきた。

楽しみかも♪

あたしはメロンパンを頬張った。



―――――――――――……

「美味しいっ。」

「ホントー?嬉しい♪」

「えへへ♪」

今日の夜ご飯はハンバーグ。

ハンバーグ大好きー♥

「とも。顔にソースついてる。」

優は笑いながらあたしの顔にティッシュを投げた。

「ぶっ・・・。ありがと。」

「ごちそーさん。」

「はい。食器こっち持ってきてー。」

優はあたしより早く食べ終わり、席を立った。

もうっ。

ホント食べるの早いんだから。

あたしも急いで残りを食べた。


コンコン。

「優ー?入るよー。」

「んー。」

ガチャ

「わっ。」

優の部屋に入ると優は上半身裸のままベッドの上で携帯をいじっていた。

「なんだよ。」

「何で裸なのっ。」

あたしは思わず声が裏返ってしまった。

久し振りに見た優の体。

すっかり男の人の体になっている。

腹筋が割れ、適度な筋肉がついている。

カッコいい。

「風呂入ろうと思って。って何考えてんだよ。エッチー。」

優はニヤっと笑ってふざけたように言い返してきた。

「別に何にも考えてないよっ。バーカ。」

「馬鹿ってともだけには言われたくなかったな。」

悪戯っぽく笑う優。

「あ、そうだ。明日放課後空いてる?」

「あー、ごめんっ。明日はちょっと出掛けるから。」

「そっか。」

「どうしたの?」

「いや、別に。久し振りに映画でも観に行かねぇかなぁと思って。」

「そっかー。今度行こっ♪観たいやつあるんだ。」

「おぅ。」

「じゃ、帰るねー。ばいばーい。」

「じゃあな。」

あたしは優の部屋のドア・・・

ではなく、窓から出て行った。

+*恋愛対象*+


「ともみー。早く行くぞ。」

「うんっ、ちょっと待ってー。」

「ほら、早く!ともみ準備遅いよー。」

教室のドアの前であたしの支度を待つともやと望愛と流星の3人。

あたしってこんなトロかったっけ?

「ごめん、お待たせー。」

「おー。行くぞ♪アイス♪」

妙に浮かれてるともや。

自分の財布を出さないからって。
畜生。


「レモンシャーベットとキウイフルーツ。レギュラーサイズで。」

ともやめっ。

遠慮を知らんな、あいつ。

ここのアイスクリーム超高いんだよ~。

まぁいいや♪

「ミックスベリーとグリーンティをレギュラーサイズでください。」

あたしもともやと同じサイズのアイスクリームを頼む。

「チーズケーキ・アイスとグリーンティ。カップでください。」

「あれ?流星は頼まないの?」

「あぁ、俺は望愛にもらうから♪」

「ふぅん。」

仲いいねー、二人とも。

まさかもう付き合っちゃったりしてて。

・・・なわけないか。

「おいひー♪」

「あっ、ともみ!あれ、優斗君じゃない??」

「ほぇ?」

望愛が最近新しく出来たお洒落な雑貨屋さんを指差した。

その指の先にいたのは・・・。

女の子と楽しそうに歩く、優の姿だった。

ドキッ―――――

胸が嫌な音を立てたのが自分でも分かった。

「誰?優斗君って。」

流星がひょこっと会話に入ってきた。

「まさかともみの彼氏じゃねぇよな?」

ともやが馬鹿にするように聞いてきた。

むかつく。

まぁ確かに違うけど。

「違うよ。あたしの隣の家に住んでる幼馴染。」

「ふぅーん。」

「ともみ、話しかけなくていいの??」

「うん、いいよ。デート中みたいだしさ。」

「優斗君、彼女いたんだね。」


・・・。

あたしはもう一度優の方へ目をやった。

優の隣にいる女の子は・・・。

凄く可愛い子だった。

何か印象はふんわりしててテディベアみたいな感じ。

小柄だけどモデルさんみたいに足が長い。

「可愛いね、彼女・・・。」

ポツリとつぶやいた。

「・・・・何?ともみ、あいつのこと好きなわけ?」

ともやがあたしの顔をのぞいてきた。

「好きだよ?そりゃ、大事な幼馴染だもん。」

「違くて、恋愛対象としてだよ。」

スキ・・・?

恋愛対象として?

優を?

まさか。

でも・・・。
さっきの胸の痛みは何?

「な、なわけないじゃん!ないない。だって幼馴染だよ?あはは。」

あたしは優があたしたちに気づいてあたしのもとに近づいてきてることに気づかないで
一人、話を続けた。

「だってさ、有り得なくない?年下だし。それに幼馴染って―――」

「とも―――」
「一番の県外じゃない?」

あたしと優の声が重なった。

「優っ・・・!?」

「・・・・・何でもない。」

優は一瞬顔を曇らせあたしに背を向けた。

「ちょっ、ともみ!いいの?優斗君行っちゃったよ?」

「っ・・・。」

いいよ・・・。

だってあたし、優のこと何とも思ってないもん・・・。

ホントのコト、言っただけだもん。

「・・・ほらっ。早く食べないとアイスとけちゃうよ?」

「・・・うん。そうだねー。」

望愛はあたしにいつもの笑顔を向け、またアイスを食べ始めた。

ズキン・・・ズキン・・・

今日は自分の家でインスタントラーメンを食べた。

+*会えない時間*+

あの日から、あたしと優はなんとなくギクシャクしていた。

ご飯は自分の家でとるようになったあたし。

優ママは「何かあったの?」とメールをくれた。

「特に何もないよー(´∀`♥)ノ」

あたしはそう返信した。

何にもないわけないと普通は思うよね。

でも優ママは深くは聞いてこないでいてくれた。

別に喧嘩したわけじゃないよ・・・。

でも、何か会いにくくなっちゃったな。

もうここ数日、優と喋っていない。

それどころか顔も合わせていない。

「なーんか変な気分!」

今日は土曜日。
学校は休み。

あたしはベッドの上でごろごろとしていた。

凄く変。

優とここまで顔を合わせてないのなんて初めてだったから。



優の、たまに見せる悪戯っぽく微笑む顔。

見てないな。

優の、あの低くて優しい声。

聞いてないな。


優のコトを考えただけで胸が痛くなる。

キューって。

何かこれも変な感じだ。

「あたし、最近変だー!」

一人、大きな声を出す。

「はぁ・・・。」

ピンポーン

「・・・。」

居留守。
面倒だよ。

・・・・ピンポーン

ピンポンピンポンピンポン

「だーっ!!!もううるさい!」

ガチャ

「居留守すんなよなー。」

そこに立っていたのは

ともや

だった。

「ともやか。だって面倒だったんだもん。」

「ひでーな。」

「上がってー。」



「どうしたの?」

「ん?いや、別に。暇だったからさ。」

「何それっ。あはは。」

ともやがうちに来るのは2回目だ。

前に1度遊びに来てた。

「音楽聴く?」

「あぁ。」

あたしはipodをスピーカーにつなげ、音楽を流した。

「この曲好きなんだー。」

「おー、いい曲だな。」

「あ、飲み物持ってくるね。」

「さんきゅ。」

あたしは扉を開け、廊下に出た。

「ヘコんでるかなと思って。」

あたしが廊下に出ると同時にともやが小さな声でつぶやいたのをあたしは聞き逃さなかった。

ヘコんでないよ・・・。

大丈夫、あたしは平気・・・。



「お待たせー。ミルクティー、飲める?」

「おう、ありがと。」

「うん。」

沈黙・・・。

ではないか。

音楽がただただ流れてる。

「なぁ、ともみ。」

最初に口を開いたのはともやだった。

「ん?」

「スキ・・・なんだよ。」

・・・!?

「えっ!?」

「流星が望愛を。」

あっ・・・。

そっちか。

びっくりした!

あはは、何か恥ずかしっ。

「あー。なんかそんな感じしたよねっ。それで・・・どうしたの?」

「で、流星が昨日協力してほしいって言ってきたんだよ。」

「あたしたちに協力してほしいって?」

「あぁ。」

「何をすればいいの?」

「もうすぐ修学旅行だろ?そんときの1日目の夜、ホテルのエントランスに呼び出してくれればいいから。」

「了解。うまくいくといーね♪」

「だなっ!」

それから結構喋って、4時ごろともやは帰っていった。


「あ、牛乳なくなっちゃった。」

あたしはもう一杯ミルクティーを飲もうと思い、キッチンに向かった。

でも・・・牛乳なかったら飲めない~。

途中まで作っちゃったのに。

しょうがない。
買いに行くか。

あたしは財布と携帯だけ持って家を出た。

優の家・・・。

ガチャ

えっ。

「「あっ・・・。」」

優・・・。

「とも・・・。」

「ひ、久しぶりだねっ。」

「おう。」

優は優しく微笑んだ。

なつかしい・・・。
優。

たった数日しか会ってないだけだったのに、なんだかすごく懐かしい気がする。

「・・・どっか行くの?」

「そっちは?」

質問返しされた。

「コンビニ。牛乳なくなっちゃって。」

「ふぅん。俺も行く。」

「えっ・・・あっ、うん。」

方を並べ歩く。

優はいつもあたしの歩調に合わせてくれる。

懐かしい優の香り。

やば・・・。
何か涙出てきそう。

「とも・・・。」

急に優が口を開いた。

ドキンッ

「・・・ん?」

「やっぱ、俺って県外?」

「っ・・・。」

悲しそうな目で見つめる。

「そんなこと・・・ないよ・・・?ただ・・・あの時は恥ずかしくて。友達がたくさんいたからあんなこと言っただけ。」

あれ・・・?

あたし、何言ってるの?

あの時はホントにそう思ったんだもんって考えてたじゃん。

何でよっ・・・。

「うっ・・・。っ・・・ひっく・・・。うぅ~~・・・。」

涙があふれ出てきた。

その時、ふわっと暖かいものに包まれた。

あたし・・・。

優に抱きしめられてる。

「ゆっ・・・う?」

「俺・・・とものこと好きだよ。」

えっ・・・?

何を言ってるの・・・?

「あんとき、正直マジできつかった。県外とか言われて。」

・・・。

優は続ける。

「俺、ずっとともが好きだったから。ともが男と一緒にいる上にあんなこと・・・さ。
俺終わった~って思ったよ。」

少し頬を緩め笑う。

「今、あえて良かったよ。」

優は真正面からまっすぐにあたしの目を見て言った。

「とも、スキです。俺と付き合って下さい。」

って・・・。

優が・・・あたしをスキ・・・?

うそでしょ・・・。

あたしは・・・。

「優っ・・・。」

あたしは優に抱きついた。

「優っ・・・。あたしもっ!あたしも優の事がスキっ・・・。大好きなの!」

「とも・・・。俺も・・・。」

+*修学旅行*+

「ともみっ!あたしねっ、飛行機って初めてなの!」

望愛は目をキラキラと輝かせながらこっちを向いた。

「へぇ!じゃあ楽しみだねっ♪」

「うんっ。」

今日は修学旅行。

今日の夜、望愛をホテルのエントランスに行かせるんだ。

流星と望愛、うまくいくといいなー。

「何か最近ともみ楽しそうだねっ。」

「えっ?何が??」

「んー。人生が(笑)?」

「ぷっ。何それっ。」

でも・・・
確かに楽しいかも。

優とカレカノになれちゃったし。
嬉しいなー♪

実は、優と付き合い始めたコトをまだ誰にも話していない。
隠してる訳じゃないけど、何か言うのって照れくさくって。

少なくともあの3人には言っておかなきゃなー。

「ほらっ、ともみ!飛行機乗るよっ。」

「う、うん。」

それにしても、望愛。
小学生みたいにはしゃいでる。

何か田舎もんに見えるよ。

こんなこと言ったらすねちゃうから言わないけどね。


搭乗口。

「せっま!」

「ちょ、望愛!そんなこと大きい声で言わないのっ。」

「あ、ご、ごめんなさい!」

機内で大声を出す望愛。

もぅ!
C.Aさん苦笑してるし。

あたしたちは席に座り、離陸を待った。

「ねぇ、望愛・・・?」

「んー?」

「あのね、あたし・・・///」

「何々!?恋バナっ??超気になるっ。早く言ってー!」

「えっと―――――」

「ぁ、分かったぁ!!!ともやと付き合うことになったんでしょ!ともやずーっとともみのコト好きだったんだもんねー。
ともみったら鈍感だから全然気づかなかったでしょ!ともやがともみのコト見てきたの。」

・・・?

「はぁ?何ゆってんのぉ!?」

「えっ、もしかして違った!?」

「もしかしなくても全然違うよ~!てかともやがあたしのコト好きなわけないじゃーん。冗談はよし子さん(笑)」

「マジでー?どうしよう。ゆっちゃったよ・・・。ともやに怒られる~!」

「なぁーに言ってんの!なわけないない!」

「・・・。」

ちょっと望愛さん。

そこで黙るのは真面目によそうか、うん。

ともやがあたしのこと好きなわけないじゃん(笑)

有り得ない。

ともやとあたしってそういう感じじゃないし!

むしろ親友の域?

うん、そうだ。
それが正解だ。

「まあ、冗談はそこまでにして。あたしね、優と付き合うことになったんだ♪」

「えぇっ!?ホントに!?」

「うん♪」

「だってこの前幼馴染は一番の県外って言ってたじゃん!」

「あれは…嘘だよ。」

「そうなんだー!おめでとーっ♪優斗君かー。やっぱりともみのこと好きだったんだね!」

「えっ?望愛、優があたしのこと好きって知ってたの!?」

「知ってたってゆーかぁ。優斗君見たら明らかにそうでしょ(笑)」

えぇっ!
望愛凄い!

あたしってもしかしてホントに鈍感・・・?

「県外って言ったの聞いたときの顔!すんごい悲しそうな顔してたし。」

うっ・・・。
確かにあたし、ホントに酷いコト言っちゃったなー。

あたし、あんなコト言われたらめっちゃ傷つくもん。

「そっかー。そうなんだー。・・・。」

「望愛?」

望愛は少しぼーっとしたように窓の外を眺めていた。

「どうしたの?」

「ん?いや、あのね。さっきともやがともみのこと好きって言ったじゃん?だからともや失恋決定だなーって思って・・・。」

「あぁ、あれ?嘘でしょ。ともやが好きになるわけないじゃん。」

「まぁ・・・。いいや!あたしには関係ないしっ(笑)って考えることにするっ。」

「あはは!」


「ともみっ。ともみっ。着いたよ!起きてっ。」

「ん~・・・。」

「ほらっ。」

「ん・・・。うん。おはよー・・・。」

あたしは寝ぼけながら返事をする。

そっか。
修学旅行来てたんだっけ。

「初★沖縄ー!いっぱい写真撮るよー!」

「はいはい。とりあえず皆の所行くよー。」

「はーいっ。」

相変わらず望愛ははしゃぎっぱなし。


先生たちから配られた予定表には、1日目は自由行動と書いてあった。

「自由行動かー!ねぇ、ともやっ。何処行くー?」

「そうだなー。どうする?流星。」

「んー。やっぱ沖縄と言ったら海だろっ!」

「そうだよね!望愛も海行きたい!」

「じゃあ、海行く?」

「おう!ホテルに荷物置いて、着替えてエントランス集合な。行先報告は俺が皆の分やっとくから。」

「サンキュっ★じゃ、あとでねー。望愛、いこ!」

「うんっ。」

ホテルの部屋割りは、話し合いの結果、自由となった。

もちろんあたしは望愛と一緒。

部屋にはベッドが2つ、シャワールームにドレッサーがある。

「可愛い部屋だねっ、望愛!」

「うんっ♪早く準備しちゃおー!」

「okok!」

この日のために新しい水着を買ったの!

ピンクの小花柄。

上はキャミソールで下はスカート。

すっごく可愛くて、一目ぼれして買ったんだ。

「わー。ともみの水着可愛いじゃんっ。」

「でしょ!ありがとー。」

あたしのはねーと言いながら
バッグの中をあさる望愛。

「じゃーん!」

「わっ!」

望愛の水着は黒の大人っぽいビキニ。

ブラの真ん中がリングで結ばれていてとても可愛い。

「大人っぽいねーっ。」

「そりゃもう。この修学旅行中に絶対流星のハートをゲットするんだからっ。」

望愛は目をギラギラと光らせた。

流星のこと好きなんだー、望愛。

へぇー。ふーん。

・・・・・・・。

「えぇっ!?」

流星のコト好きなのっ!?

じゃあ両想いじゃん!!!

わー♥

「そうなんだー!頑張ってね!」
「うんっ!」

うふふ。
ニヤニヤがとまらんっ。

楽しい修学旅行になりそうだわ。

「お待たせー。」

「おせぇよ。」

「うっさい!」

「もぅ、ともみっ。早く行くよー。」

「ったくともみとともやは相変わらずラブラブだよなー(笑)」

「「なっ、違うし!」」

ハモった。

てか、ラブラブはどっちだ!

望愛と流星じゃーん。

ふふふっ、楽しみ。

「ともみー?早く行くぞ、のろま。」

「うるさいなー。分かってるよ。てかさ、聞いてよともや!」

「ん?」

あ、待てよ・・・。

言っちゃっていいのか・・・?

でもいずれ分かることだしねっ。

「望愛、流星のことスキなんだって!」

「マジで!?うわ、じゃああいつら・・・。」

「うんっ♪」

「今日の夜、楽しみだなっ。」

「うんっ!」

「何やってんだよ、お前ら。」

「わっ、流星!びっくりしたぁ。何でもなーい。さっいこ!」

「おうっ♪」

____________________________________

「きっれーい!!!」

「ホントだぁ!!!ともみっ、海青ーい!」

「ねっねっ!早くいこー。」

すっごい!

東京の海はこんなんじゃないよー。

同じ日本とは思えないなぁ。

あたしと望愛はすぐに着ていたTシャツを脱ぎ、海の中へと入った。

「ったくお前ら!このTシャツどうすんだよ!」

「そこらへん置いといてー!てか早く二人も来なよっ。」

「ったく・・・。」

「流星っ、早くこっち来てよっ。」

「え、あ、うん!」

おー。
望愛ったらちょっぴり積極的?

いいねー。

「ともやっ、こっちこっち!」

あたしはともやを呼び止めた。

望愛たちの邪魔しちゃ悪いもんね。

「あの二人さー、どっからどう見てもラブラブカップルだよねー。」

「だな。あー、俺も彼女欲しー。」

「ははっ。ともやならすぐ出来るでしょ。」

「できねぇよ。ともみは?」

「あ、あたし・・・?」

ここで・・・言っちゃったほうがいいよね・・・?

別に、ともやは友達だし!
望愛の言ったことなんか関係ないしねー♪

「あたしは、彼氏いるよっ♪」

「・・・・っはぁ!?」

「えぇっ!?」

びっびっくりしたぁ。

そんなに驚かなくてもいいのにぃ。

あたしってそんなに彼氏できなさそうに見えるわけ?

失礼なやつっ。

「おまっ、えっ!?彼氏できたの!?あの、優斗ってやつ?」

「え、うん。そうだけど。そんなに驚かなくてもいいじゃんっ。」

「えっ、だって・・・。いや・・・。あー、マジか。」

「うん。」

・・・。

沈黙。

何か言ってよー。

「あっ、俺かき氷買ってくる!」

「え、いいなぁ。あたしも一緒に―――」

「俺がお前の分も買ってくるからっ。」

「あ、ありがと。」

なんだぁ?
やけに気が利くな。

・・・望愛が言ったこと、嘘だよね。

ともやが変だったのも気のせいだよね。


でも・・・それは気のせいなんかじゃなかったんだ。

「望愛ー。自販機いこー。」

「うんっ。」

あたしたちは海から帰ってきて、ご飯を食べて買い物をして・・・。

今さっき、やっと帰って来た。

シャワーを浴びてから望愛をロビーに連れて行く。

これから流星が望愛に告白っ。

「何飲むー?」

「んー。あっ、流星!」

「えっ!?///」

自販機の横の椅子に流星とともやが座っていた。

流星はちょっと緊張した顔つきであたしたちのことを待っている。

「ほら、望愛。声かけてきなよ。」

「うっ、うん。」

_______________________________

「ともやっ!」

「おう。」

さぁ流星!

頑張れ~!

「あっ、のさ・・・。」

「うん?」

「俺・・・望愛の事スキなんだけど。・・・良かったら付き合ってくんない?///」

「・・・えっ!?・・・ほ、本当に?///」

クスッ。
可愛い、望愛!

めっちゃ顔赤いしっ。

それでもスキでした。

それでもスキでした。

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-10

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. +*入学式*+
  2. +*優*+
  3. +*メロンパンとハンバーグ*+
  4. +*恋愛対象*+
  5. +*会えない時間*+
  6. +*修学旅行*+
  7. 7