恋なんて二度としない
恋には要注意
始まり
「ずっと前から好きでした!付き合ってください!」
暗い廊下に光が当たり二人の影が伸びる。
彩音は顔を真っ赤にさせる男子、悠人を見つめた。
小さな体、皆から愛される人望。
だが彩音は正直彼のことを知らなかった。クラスも違っていた。あと別に好きな人がいたからだ。
「小学生では早いと思うので中学校まで待ってください。」
そう、彩音たちは小学生なのだ。六年生といっても子供。恋なんて早すぎる。
頷く悠人。
だが、これが悪夢の始まりだった。
日常
彩音は基本、女子と供に行動していた。告白されたのは五年生。
お人形のように可愛い絵美、リーダーの凜、優しい千裕、彩音と同じ本が好きな亜美。
この五人は常に一緒にいた。たわいもない話で盛り上がる。だが、この日は違った。
「おはよ、凜」
彩音の挨拶に目をキラキラさせる凜。
「彩、悠人と中学で付き合うんでしょ!?」
「は?」
彩音が言ったのは考えさせてくれ、という意味。よく聞くと本人が皆に言いふらしたらしい。
はっきりいって彼の事はよく知らない。少し様子を見ようとしていた。
その日はこの話題で持ちきりだった。
転機
六年に進級。あっという間だった。
凜と千裕とクラスが別れてしまう。美亜と絵美と同じになったが、絵美は元々お嬢様のような雰囲気を纏った女子。何もかもが大雑把な彩音と合うとは思えない。当然のように彩音は美亜と行動を供にし、絵美は親友のサクラと行動した。
「久しぶり」
話しかけてくれたのは好きな人、翔だった。
目立つことない彼だが、よく気が合い、話していて退屈しなかった。よく彼とのカレカノ疑惑はあがっていたが、よく否定してしまった。
「久しぶり!!」
長い間離れていたクラス。彼も変わる。当然、彩音も。
悪運
翔は好きな人がいた。
気が強くて、クラスのリーダー核の一人、菜月だった。恨めない性格で少し男勝りな彼女。
彩音は人間不信になっていた。女子友達とのトラブルが原因だった。仲間はずれを嫌い、人を信じなかった。
悠人も一緒のクラスだ。回りのクラスメイトたちは彩音と悠人を冷やかし笑った。
怒りに身を震わせる彩音とは対照的に悠人は心底嬉しそうだった。
何で
どうして一緒なのだ。彩音は心から問いかけた。何回悠人と遊んでも、好きになれないのだ。一方菜月と翔は距離を縮めていく。
彩音はもうなにもわからなくなり、悠人とライン交換までしてしまった。翔と悠人は親友なので翔の連絡も聞けたのは唯一の報いだが。
そんなときに来たのが漢字大会だった。合格できなければもう一度、またもう一度と生徒たちからは不人気だった。
【勝負しよう】悠人からのライン。成績がどん底の彼が勝負を持ちかけるなんておかしい。そう疑えば良かった。
【いいよ】【勝った方のいうことを負けた方は聞くこと。】
負ける気はしない。成績で誰かに負けたことはなかったからだ。
【ユニバーサル行こう。】ユニバーサルとは卒業祝で自治会が連れていってくれるイベントの略しだ。だが彩音はもう行く人を決めている。その人たちを裏切るわけには行かない。
【行く人決めてる】【無理、二人で行く】
二人?絶対無理。あらぬ噂をたてられるのが目に見えている。
【ホントに無理】【あかん】
彩音は徹也で勉強することを決めた。
限界
勝負は彩音の圧勝。だが、彼は想定通りというようにラインを送ってきた。
【バスの席は隣な】
あり得ない。何で諦めてくれないのだ。察してほしい。もう限界だということを。
【もうホントに無理】
彩音はブロックした。
それから。
今は1月。彩音は家で年越しのカウントダウンを見ていた。翔からの説得でラインのブロックは外した。相変わらず送られてくるが、全部既読スルーだった。
【オイ、既読スルーすんな。】【見てるんやろ】【君のためなら死ねる】【何で君はわかってくれないんですか】【翔とかと話すな】
段々エスカレートしていく内容。最近は電話も多い。
彩音は女子友達、真実に相談した。
【どうしよう】【縁切った方がいい。】【やっぱり?】【それに、翔のこといじめてるらしい。】
え?
彩音はラインで聞いてみる。真美が知る限りでは彩音と話した男子をいじめていたらしい。
卑怯すぎる。こいつとは縁を切る。
終り
【もう止めて】
彩音は悠人のラインを消した。それから彼女は彼を恨んだ。翔をいじめたことやさんざんというほど振り回したあげく、今では違う好きな人を作っていること。何がしたいのかよくわからない。
今彼の好きな人は女子のリーダー、香織だ。運動神経もよく、綺麗な顔。歌も上手く、彩音となかもいい。
だから彩音は彼の恋を潰すことにした。汚く、原型なんてないくらいに。
香織に全てを話し、拒絶させた。
これでお互い様。これからも恨み続けるよ。ねぇ?これだけでは済まさない。
次は何を潰そうか?
恋なんて二度としない
実話です