あのときの私

小学校に入学したときから私は、ホームシックでほとんど毎日泣いていました。
そんな私のことをよく思っていなかった担任の先生は、毎回私のことを怒鳴っていました。
怒鳴られた私は、怖くてさらに泣いていました。
そのときのことを少しだけ書いてみました。

小学校2年生ではじめて死にたいと思った。
担任の先生から嫌われて、理不尽な注意ばっかり受けた。
なんで私だけ、なんで私だけ怒られなきゃいけないの。
他のみんなと何がちがうの。
いつまでこんなのが続くの―。
先生が転勤しないでいつまでも、私の担任のままならいっそのこと……、
｢死にたい…｣

学校の下駄箱の前、授業中の静かな廊下で、私はひとり考えていた。

私は授業中にまた注意されて、顔冷やして来いって怒鳴られたのだ。

しかし水道で顔を洗っても涙はおさまらない。

それどころか、どんどん溢れてくる。

ならいっそのこと、涙がおさまるまで教室に戻んないでいようか。

そうすれば怒られもしないし、授業だってサボれる。

問題ができなくて怒られて泣いて、さらにまた怒られる。

完全に負のループだ。

ひんやりした誰もいない廊下で、青いジャージの短パンに、赤いハイソックスを履いてきた私。

今日は珍しくかわいいキュロット、履いてきたのになぁ。

仕事が休みのお母さんが選んでくれた。
だから今日は先生に怒られても、

｢泣かない、大丈夫。泣いたらまた怒られるんだから｣

って朝から言い聞かせてたのに。

お母さんの顔を思い浮かべただけで、涙が零れて止まらない。

ホームシックだった私は、先生に怒られる度にお母さんのことを思い出しては泣いていた。

それが先生は気に食わなかったのだ。

両親が離婚して父子家庭であり、面倒はおばあちゃんが見ているというクラスメイトがいた。

先生は、そのクラスメイトを引き合いに出し、私にこう告げた。

｢○○は、お母さんがいないのに泣いてない、あんたはお父さんもお母さんもどっちもいるのに泣いている｣と。
私は何も言えず、唇を噛んで泣くのを堪えた。
そして私は先生にさらに注意された。

｢いつまでも泣くな。泣いてる顔をみんなに見せるな。みんな気分悪いんだよ！｣

そう言って、いつもはみんなで輪になって食べる給食の席で私をひとりぼっちにした。
それだけならまだよかった。

自分の味方どころか、先生の肩ばっかり持つ少人数のクラスメイトと給食を食べられなくたって痛くも痒くもない。
むしろありがたい。

そう思った、そう思うしかなかった。

｢謝れよ。泣いてる顔を見せてしまってごめんなさいって謝れよ！｣
先生は私に怒鳴りつけた。

私はさらに萎縮してしまい、嗚咽が止まらなくなった。

泣きながら謝罪する私に、冷たい目をするクラスメイト。

そして先生は私に、｢図々しい奴だな！｣と怒鳴った。

それは小さな私にかけられた呪いのようだった。

そしてそのときから、あぁ私って、図々しいやつなんだって思ったの。小学2年生でね。

ある日の授業中、いつまでも泣いているからと私は先生に体を引っ張られ教室の外に追い出された。

廊下にも、ベランダにも、そして鍵まで閉められた。

今から考えたら体罰になるんじゃないかな。

クラスメイトはよかっただろうよ、あたしだけが先生に怒られてばかりの劣等生。

自分より下がいるから、そいつには上から言える。って思っときゃいいんだもん。

廊下に出されて、教室に戻ろうとしてもなかなか入れなかった私は、トイレと玄関をうろうろしていた。

うろうろしていると他の先生があたしを見つけ、なんで泣いてるの？なんで外にいるの？と聞いた。

私はずっと泣いててろくに話せなかった記憶がある。そしてしばらくして担任に引き渡された。

そのときあたしは、やだ、行きたくないって思った。

先生が妊娠してるから無理させるなとあたしに視線を注ぐクラスメイト。

私だって好きで怒らせてるわけじゃないのに。

もう10年以上も前のことですが、今でも鮮明に覚えています。今から考えたら私は、当時からどれだけ大人だったのかなと自分で自分を褒めたいと思います。あの時のことは、今の私に良くも悪くも影響を与えています。