彼岸
病院に残された遺品を整理していた彼は、故人がわたしのことを書いたと思われるメモを見つけた。彼は故人の数少ないうちのこの肉筆を自分の手元に残していいかと尋ねた。彼への言葉ではない肉筆であるにもかかわらず。数ヵ月後の日に、初めて彼の気持ちが少しだけ分かったように思えた。とても寂しかった、冬晴れ、陽射し、一年の景色、黙してぱらぱらとほんの暖かみにちぎられて、寂しく。そのとき、少しだけわたしは彼に近づいたのかもしれなかった。
なお、心もとなく、
ただ、
信じたかった。
ひとつのみ、信じたかった。
彼岸
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