出来合いの退廃

 人の色褪せる気配を身の内に感じるのは
 それは一等強い体験の金字塔で
 茨の道のように綺麗な場所を歩もうとしているわけではなくて
 欲望の敷き詰められた巌の上を
 人のいない静かで厳しい道を歩もうと思っているのだから
 青空の照り返しに瞳を灼かれたとしても
 やがて風雨の来ることを
 臓腑を浚っていく風の来ることを願いながら
 今はただ歩むのみ

 今はただ己の無力を嘆くのみ
 退廃に身を浸すこともできなければ
 太陽の下に身を曝すこともできない
 日の当たる部屋にて退廃を夢想することしかできず
 光陰は矢のように進むだけ

出来合いの退廃

出来合いの退廃

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-02-04

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