雑多

北国と聞いていたから、自分なりに相当な厚着をしてきたつもりだったけど、北国はそんなに甘くなかった。特にこの時期は昼夜関係なしに氷点下があたりまえで、手袋は必須だった。手袋を持ってこなかった私はポケットに手を突っ込んで歩く羽目になった。吐く息が白い。思わず鼻をすすってしまうほど寒いのがまさしく肌で体感できる。
通り過ぎる人はみんな足元の氷で滑らないように下を向いて歩いてきた。だからすれ違っても挨拶するタイミングがイマイチわからない。せっかくなので私もそうしてみた。滑るかも、という不安が消えたら、ずいぶんと歩きやすくなった。逆に増えたのは、歩くスピードが上がったから、当然運動不足な私の呼吸は荒れに荒れたこと。マラソンでもしてるみたいに口で息を吸っては吐く。吐く息は当然白かった。そんなことをして歩いてたら、駅が見えた。暖房の効いた駅構内や、暖かく、独特な揺れが眠らせてくる電車の中を想像するだけで、自然と顔がにやけてくる。
でも、その手前。いま通り過ぎようとした屋台村から、大きな笑い声が聞こえてしまった。
ほのかに漂ってきたおいしそうなにおいや、絶えることなく聞こえてくるおじさん達の笑い声。ずるい。そんなに楽しそうな声が聞こえてしまったら、心が揺らいでしまう。でも、そこは堪えて。今日の私にはまだダメなんだ。
そしてわたしはまた、駅に向かって歩き始めた。週末に、この笑い声の主を見に行こうと決めたから。

雑多

月曜ならではの「これを週末の楽しみに・・・。これの為に頑張ろう・・・。」系のです。
残念ながらお酒は楽しめません。別にお酒だけが楽しみというわけではないですし。
悪いことばかりではないんですが、目立ってしまうのは悪いことばっかりです。
だからですかね。思いがけない幸せって最高なんです。

雑多

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-01-29

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