溶けゆく者たち

青白い部屋で、目を覚ました
布団が青いせいなのか、はたまた部屋に直接光が当たらずほの明るい朝の気配しか感じられないせいか、毎日朝が、青白い

満員電車に乗る
押し合いへし合いしながら小さな箱に入ると他の人がまるで人間として感じられないときがある
大きな塊、あるいは荷物
そこにぽつんといる、自分

目の不自由な人がいて
手で空をきり、つり革を探していた
つり革は少しだけ遠くにあった
つかみそこねたまま、また電車が動き出した
人がまた乗ってきて押し流された
つり革はもう遥か、遠く

どこか他人事のようで、当事者意識が低い
温い湯のような、

溶けていく
自分もその塊の、一部のように
青白い朝の、一部のように

夜、寒空の下を独り歩く
星はさっぱり見えなかった
吐き出した息は白くうねりながら濃い墨色に溶けていった

行き場のない闇のようだ
光があると途端に居場所を奪われる
行く当てのない闇は、留まることを赦されず
ただ溶けることしかできなかった

ドロドロに
ぐちゃぐちゃに
ポタポタと
さらさらと

私はあの溶けそこねた雪になりたい
何度も踏まれ、コンクリートのように固くなった氷に、なりたい

溶けゆく者たち

日常に揉み揉まれて、忙しくも愛しい毎日に
変わらないものを、確かなものを得ていたい

溶けゆく者たち

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-01-27

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted