自選歌集 2017年
街の歌
閉店のあとのあなたを待ちながらやはりおしりが好きだと思う
まず椅子を壊れていたら修理して座れる場所をたくさん作る
街中に全部の色の紙吹雪ぼくらは道に迷いたいんだ
土曜日はひとりで舞踏日曜を週の始めとする派ですので
夕暮れと夜の歌
とがらせた色鉛筆で君が描く本物よりも優しい夕陽
夕暮れに回る木馬は片道で、帰れなくてもいいのね、乗って
蜂蜜をたらし続ける拷問をふと思いつく 眠れない夜
真夜中の窓にようこそ白い猫、君だけが影あとはみな闇
こっそりと星のしずくで研いでいたナイフを使う朝が来たのだ
けもの、けだものの歌
子狐を盗んだでしょうふさふさの尻尾でふさいで殺してあげる
のけものがけものとなって叫ぶ夜(よ)は灯りを落とせ物言わず聞け
獣(けだもの)に超自我(スーパーエゴ)を喰らわせて咬みあいながら月夜に踊れ
異形の歌
むかしむかし金魚は赤く染められて後は散るまで漂うばかり
人形のわたしが君にふれたくて伸ばした髪よ祓わないでね
現し世を赤と緑で染め上げて、嗤え、嗤え、ザ・グレート・カブキ
もういいかい僕はホントの鬼だから見つけたひとは食べてしまうよ
異次元の歌
ほとんどの時計が時限爆弾に志願している世界の終わり
この古い時計が時を動かしてる止めちゃ駄目だと言い出す大人
包装紙剥ぐ妄想し抽象し穴もらせんもねじり異次元
影薄く地味なわれらが手を結び世界こっそり征服計画
貝ガラの螺旋の奥へ虹色の道を通って手と手をとって
僕の歌
触角を震わすように呼んでみる応えた人を友達にする
てんしあくまけだものことりしんかいぎょ飼いならせないいつか飛び出る
晴れた日の午後の眠りは冷たくて死にかけていたようにため息
夜が明けて見える景色が同じでも誓いを立ててみようと思う
愛の歌(笑)
ほとばしる紅(くれない)、君が達筆で「諸行無常」と書くオムライス
抱きついてきた君を受けとめながら「寄り切り」を連想してごめん
ラララララ、ラララララララ、ラララララ、ラララ、ガッ、うっ、ラララララララ
頼りなく風に吹かれて立っているわたしに欲情してらっしゃるの?
ハートがね かわいいおしりに みえるんだ ハートもいいね おしりもいいね
自選歌集 2017年