君と僕の恋距離。

君が好きだけど届かない距離に居る…

episode1 ❁ 君との出会い。

私のバイト先に特に仲のいい人はおらず平凡なバイト生活を送っていた。
しかし、去年の夏ごろ君が来てからは平凡な毎日が輝いて見えた。
会話を交わすたびに私は君のことが気になっていた。

日曜日。
―――はぁ。

思わず大きなため息をついた私はちらっと好きな人を目で追いかけた。
私の名前は、逢沢結羽(あいざわ ゆう)。もうすぐ３年生になる。
冬休みもしばらく経ち日々バイトの生活を送っていた。
バイト先のストックにある机の上でもう何度目かのため息。

「…今日も話せないで終わっちゃうのかな」

誰かに言い聞かせるようにポツンと静かな部屋の中に問いかけるが返事は返ってこない。
当たり前だ、分かっている。
私がため息をついている原因は好きな人とあまり話せず程遠い存在ということ。

篠田 陵(しのだ りょう)君。高校2年生。
草食タイプであまり話しかけてこないので話しかけるのはいつも私。
眼鏡をかけていて頭がいいらしい。

「逢沢さん、ちょっと取りたいものあるんだけどいいですか？」

「は、はい！どうぞ」

突如好きな人が私の名前を呼び思わず肩を飛び上がらせた。
少し困ったような顔をした後私の後ろを通り何かを探している。

「な、なに探してるの？仕事頼まれたの？」

「うん、店長に取って来てって言われてさ。さっきからため息ついてるけど何か悩み事？」

”君のことで悩んでる”と言えるはずもなく私は隠すように笑った。
篠田君は気にした様子が無いように仕事に戻って行ってしまった。
私は再び大きなため息が”後悔が増えた”と語った。

篠田君は同い年だけどバイト先では私の方が先輩になる。
色々教えたりして分からないところは素直に質問してくれる。

ふと手にしていた携帯の時計とにらめっこする。
休憩時間ももう終わりだ。急いで立ち上がってエプロンに着替え仕事に戻る。

時間は刻々と過ぎて行ってしまい私は上がる時間になってしまった。
内心腹を立てながら挨拶を交わして最後に篠田君に挨拶をして私はまっすぐ家に帰った。

「はぁ…また話せなかった。最悪」

君に可愛いって言われたくて巻いてみた髪も気づいてもらえず自分が馬鹿らしくなった。
明日は頑張ろうと心に誓って明るく家のドアを開けた。

『 バイト、お疲れ様。 』

前lizeを交換する機会があったので交換したゆういつの連絡先。
特に話はすることなく私が送ってスルーされるばかりと空回り。
明日はもっと話しかけて頑張ろう
そう心に誓うと眠りについてしまった。

ーーーピコン♪

篠田 『 ありがとう、今日さー………があってさー 』

篠田 『 夜遅くにごめんな、おやすみ 』

次の日私は早くに目覚めまだ意識がもうろうとする中携帯で時間を見た。
しばらく画面を見たまま固まった後…
「ええええええええええええええ！？篠田君からlize来てる！？え！」
思わず叫んでしまった。
いつも返事が短いのに今日ミスしたところを教えてくれて改善点を求めてきた。

「ゆう！朝からうるさいわよ！近所迷惑でしょ！静かにしなさい！」

お母さんが怒鳴り散らすのも聞こえないくらい私は携帯の画面に夢中になっていた。
今日は月曜日の朝。気分はるんるんで制服に着替え準備を始めた。

「ふーんふふ～♪」

「まったく朝から叫ぶなんてどうかしてるわよ…あんた」

「ごめーん♪」

「ゆうおはよう。お？ご機嫌だね！なんかあった！？」

二つ上の姉、”結榎(ゆか)”姉が寝ぼけた顔で言う。
私は笑顔を向けて「おはよう」といった後席に着く。

「いつも不機嫌なくせに…調子狂うわあんた」

お母さんは相変わらず冷たい目でﾎﾞｿｯと言う。
私は気にしないでご飯をにこにこしながら頬張った。
今日バイト先で会うのが楽しみすぎる。

篠田君と私は同じ学校、しかし特進科と普通科なので棟も違えば階も違うので学校では会えない。
なので楽しみはバイト先まで取っておくのだ。

「行ってきまーすっ♪」

元気いっぱいで外に出ていつも通り待ち合わせしている隣の幼馴染”華凜(かりん)”と並んで学校に向かう。

「あんた、ご機嫌だね。朝からあんなに叫んで目が覚めたんだけど。私の睡眠返して」

「ごめーん♪あのね‼篠田君から長い返事？来たの！仕事ミスして相談されたんだ―♪」

「あー、それで。でもまじで朝から叫ぶのは辞めて、私だけじゃなくて近所迷惑だから」

「はーい！ふーんふふ～♪」

私の学校には好きな人が居る。
バイトをしているところへ君がやってきて、同じ学校だと知った。
届きそうで届かない微妙な距離。
なんとか距離を縮めようと一生懸命頑張る主人公のお話です☺