感情少女

相変わらずの暗い話です

皆さん 今日は私のお話を聞いてくれませんか

といっても許可なく話しちゃうんですけどね はい

私が話したいのは感情についてなんですよ あ 私の手のひらが真っ赤なことは気にしないでください

それについては後で話したいと思います ですから今は私の話にだけ目を耳を体を向けてください

皆さんは感情を持っていますよね 嬉しい 悲しい 楽しい 寂しい 憎い  痛い さくっとあげるとこんなところですか

そしてその場面で出す感情を 皆さんはどうやって決めていますか?

友人に聞いたら皆決めないっていうんです おかしいですよね だって私はそうしないと感情がごちゃごちゃになっちゃって

皆が笑ってるときに悲しくなっちゃうんです 誰かが誰かを憎んでると楽しくなっちゃうんです

でもそれはおかしいことだと そう一応自覚はしてるから 決めることにしてるんです

皆が笑ってるなら私も笑います 誰かが誰かを憎むなら私もその人を憎みます

こうやって私は今まで生きてきました それから一度も感情を出し間違えるなんて失態は仕出かしていません

ですが 私は知りたくなってしまったんです

友人がどうやって感情を自由に出すのか

だって友人は楽しいと普通に楽しい感情が出てくるらしいんです 私はこんなに一生懸命考えているのに

友人はいとも簡単にそれをこなしちゃうんです やり方を聞いたって苦笑して 訝しげに私を見て 影で私を叩いて 

まるで 私を鬱陶しいもののように見て それも友人は考えることもなく自然に出してるんですよ

私はその方法を凄く凄く知りたい いえ 知りたかったんです

本を読んでパソコンでもいっぱい調べて 友人以外の人にも聞いて 新聞ラジオテレビ噂話携帯広告・・・色んな情報を駆使しました

それでもそんな方法はどこにもない どこにも書いてないんです

お母さんはそんな私を病院に連れていってくれました

私が病気なんじゃないかと 私はこれが「病気」だと知れるなら それでも構わないと思い浮かれ半分でお母さんに着いていきました

だって病気なら治す方法があるなんです 私はそれに「期待」をしていました

でも病院の先生は 異常はどこにも見当たらないといったんです

お母さんはそんな筈ないと先生に掴みかかっていました 

私はそんなお母さんを見て「おかしい」と思いました だって面白かったんです

そこで私は ふ と気付きました これが感情なのではないかと

友人は感情は勝手にでるものだと 出そうとして出すものじゃないと いつも言っていました

私のこの感情は今勝手に出てきました つまりこれが私の感情だったのです

怒る人間を見ておかしいと思い 皆が笑う時に悲しいと思い 誰かを憎む人間を見ると楽しくなる

それが私の感情だったんです おかしいことと自覚していたのに 何で病院なんて行ったんでしょうね

そして私は長年悩んでいた感情について ついに知れたんです

知れたんです 知れたんです 知れたんです でも 知れたはずなのに

私の中にあった感情は 「虚無」

たったこれだけの結果だったんです

あれだけ一生懸命考えて友人まで失い周りの人間も悩ませて色んな情報をかき集めた結果

この「おかしい」が私の感情の正体だったんです

その結果私の中には何も残らなくなってしまった それが私はひどく 酷く 酷く・・・?

悲しい?楽しい?悔しい?嬉しい?

あれ、どれなんでしょう もう結果も結果なんで訳わかんなくなってきちゃいました

今まで感情を考えて出してたせいでしょうか それも今では必要なくなったんですね

つまりは何もなくなっちゃったんです

お母さんは私を見捨てちゃいました

友人たちは皆違う友達と遊ぶようになっちゃいました

先生たちはどれだけ私が話しかけても無視するようになっちゃいました

本を貸してくれたおじいちゃんは私に嫌悪を向けるようになっちゃいました

病気でも私にはいつも優しくしてくれたおばあちゃんは死んじゃいました

私の心には虚無と感情がぐちゃぐちゃどろどろ

もうどうしたらいいんでしょう 私は笑ってしました

目からは液体が出ているのに 笑ってしまうんです 

多分 これは「悲しい」なんです 今まで感情を作ってきた私が「泣いて」 おかしい私が「笑って」いるんです

私はどうしたらいいんだろうと 考えました

考えて考えて考えて考えて考えて考えて

今の状況に至るんです

私の手のひらは真っ赤です

当然です だって自分のお腹刺しちゃったんですから

皆さん心ってどこにあると思いますか

私はお腹だと思うんです だって色々考えるとお腹って反応するじゃないですか

だから心はお腹にあると思うんです そして その感情のぐちゃぐちゃどろどろもお腹にあるんだから

そこを刺して 穴を開けて そのぐちゃぐちゃどろどろを出しちゃえば 私は普通になれると思ったんです

お腹からじくじくじくじくと何かが伝わってきます

口からも赤い液が漏れてきました

息も上手くできません 力も入りません 段々眠気もきました

多分起きたら私は普通の子になって お母さんも友達も みんなみんな元通りになってるんです

だから 

だから

だから

今だけおかしな子でいます

「痛い」も楽しくて

「辛い」も嬉しくて

「苦しい」も「泣きたい」も「逃げたい」も気のせいで



「死にたくない」も「おやすみ」に

感情少女

感情がばらばらな少女について話したかったんですがあんまり上手く設定を生かせていません、すいません

感情少女

少女は眠る前に話す 感情について

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-08

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