魔法使いと見た空

魔法での戦争が始まって、5年。
まだ終戦する様子はなく、街は荒れ果てていた。
その荒れ果てた街を一人、少年が歩いて行く。
15歳の少年は、ついさっき目の前で、母と双子の弟ルークを失った。
彼はアレックス――――アル。
父、アルクは有名な魔法使いで、3年前招集されて戦争に行ったっきり帰ってこない。きっともう生きてはいないと、母が言っていた。
アルの魔法は父アルク直伝のもので、国を落したり、天候も意のままにできるものらしいが、アルはその方法を知らない。

こんなもの、とアルはつぶやいた。
手に握っていた紙切れを握り締める。ルークの招集状だった。
今朝、魔法を使えなかったルークに招集がかかった。
魔力を持つ、しかも強力な魔法を使えるアルは、兵役を免れたのに。
ショックで我を亡くした母は、ルークと自殺した。
生き残った。家族で、たった一人。
アルは何度も死のうとしたが、何故か気づいたら目を覚ましてしまう。
街には人もいなくて、まるで世界で一人だけ生き残ってしまったようだった。
砂埃が風に巻き上げられて、悲しい。
行くあてもなく街をさまよって、いつの間にか何かのはずみに死んでしまえばいいとアルは思った。
ふらふらと、歩く。
・・・と、路地裏にさらさらとした白いものが見えた。
する事がないので、あれが獣で俺のこと喰い殺してくれないかなと、近づいてみる。
「・・・!?」
それは、少女だった。
白い長い髪の、綺麗な顔をした少女。足首に、痛々しい大きな紫色のあざがあった。
まだ息をしている。
「おーい」
アルは生気のない声で声をかけてみた。
「いきてるー?」
息をしてるから瀕死か、と独りで笑う。
「いいよね、あんたは。」
話しかけるもなくしゃべっていると、少女の指先がぴくっ と動いた。アルは気づかない。
「もう死ねるかもしんないんだろ?」
「何でそんなこと言うんだ!!!」
「!?」
がばっと、少女が起き上がる。
「私はまだ生きたい!この戦争を終わらせるん・・・きゅっ」
そういって、目を回して倒れた。
「!?」
ぐ~~っと少女のお腹がなる
「え・・・これは、、、、助けた方がいいのか…」
アルは仕方なく少女を担いで、近くの元市場に行った。
今はもう人はいないが、朝までは街はいつも通り人であふれていた。
しかし、この街のアル以外の男はみんな兵士として連れ去られ、女は働き手として駆り出された。
たった数時間前の出来事だった。誰かが「もう帰って来れないだろう」と言っていた。
・・・だから、市にはまだ新鮮な食べ物があった。

to be continued

魔法使いと見た空

魔法使いと見た空

それは、戦争に巻き込まれた一人の少年と、一国の姫の物語。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-08

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