ぶどう農家民話・赤ぶどう好きのカラス
昔、赤ぶどう農家と、赤ぶどうが大好きなカラスがおりました。
農家の赤ぶどうをカラスが切なく見つめるので、農家は「色付きが良くなるよう協力してくれるのなら食べていいよ」と提案しました。
根が真面目なカラスは、初夏に環状剥皮を施し、実太りの時期の昼は日光が当たるよう葉を除け夜は打ち水で地熱を冷やし、仕舞いには反射シートを持ち込むなど、それはそれは頑張って毎年美しい紅色の赤ぶどうを作り上げていました。
しかしある夏、いくら頑張っても、ぶどうに色が乗らない年が訪れました。
ありとあらゆる手段を講じても赤ぶどうは赤くならず、追い込まれ自分を失ったカラスは、己が首を掻っ切ってしまいました。
最後の瞬間、飛び散った血がぶどうに付着するのをカラスは目撃しましたが、その赤はカラスの好んだ恥じらうような紅色ではなくどす黒い錆色だったので、失望と後悔に巻かれ事切れました。
仲間のカラス達はそれはそれは怒って、赤ぶどうを激しく攻撃しました。
それ以来、カラスは赤ぶどうを見かけるといじらずにはいられないのです。
ぶどう農家民話・赤ぶどう好きのカラス