蘭鋳と神様のお話
〜らんちゅう〜
緑色の硬く四角い世界に。
私は、蘭鋳として産まれました。
青い半透明な紐に産み付けられ、ゆらりる、ゆらりと揺られながら、私は生命の膜の中から、くるりる、くるりと外を眺めていた。
くるりる、くるり…ゆらりる、ゆらり…
私が生命の膜から、ずっと見つめていた、あれは何なのでしょうか…。
透明な楕円形の美しい丸が、止めどなく空に光り消え逝くのです。
ぶくぶくぼこく、ぼこぶくぼこぼと…。
誰か…教えてくれませんか?あれは…なんなのですか?
ある日、私は生命の膜を破り外に出てみたのです。私は驚きました。
辺りを見わたすと青い紐に、私がいっぱいです。何だか、嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
誰か…教えてくれませんか?何で、私がいっぱいいるのですか?
ある日、四角い世界は私でいっぱいになりました。
でも…何でかな…私は、その他の私と少し形が違うのです…。
誰か…教えてくれませんか?何で…私の…尾っぽは曲がっているのですか?
私は、この個性的な尾っぽが大好きです。
だってね、沢山の私の中でも、私しか持ってない綺麗な尾っぽだもの。
私は自慢の尾っぽを、ひらりる、ひらりと揺らしながら私達に自慢して泳ぎました。
私達は、とても楽しそうに喜んでくれました。
ある日、空に大きな大きな神様が現れました。
私は、少し怖くて透明な楕円形の丸に隠れたのです。
神様は、怯える私達の中から一匹、一匹と、じょぼんしゅ、じょぼん、しゅっと連れて行ってしまいました。
誰か…教えてくれませんか?連れて行かれた私達は…いつ帰ってくるのでしょうか…。
私は、その日から神様がとても怖くなりました。だって…私は、私達と一緒にいたいのだから…。
ある日、神様が空からご飯を下さいました。
空から舞い落ちる、不思議な秋色のご飯…とても、美味しかったです。
私は、神様に心で謝りました。
神様、ごめんなさい。神様は怖くないんですね。
神様、ごめんなさい。神様は優しいのですね。
神様、ごめんなさい。怖がってしまって。
私は、神様に謝りたくて秋色の雨の中、神様に自慢の尾っぽを強くなびかせて近づきました…。
神様は、私の気持ちを知ってか、私を神の手で持ち上げました。
神様の手は、とても熱くて、とても苦しいのだと知りました。
私は、神様の御顔近くに連れて行かれました。
神様は、私を見つめて言いました。
…失格…って…。
神様は、私を空高く投げました。
私は、ぐるぐるん、ぐるぐるん、と空を泳ぎ…ばちんと音を立てて地獄に落ちました。
私は、息の吸えない地獄で考えますが分かりませんでした…。
すみません…誰か…教えてくれませんか?すみません誰か…教えてくれませんか!!
お願いします。私…苦しくて…。…。
どうしたら…神様は…許して下さいますか…私を見つめる…貴方…。
貴方も…神様…ですか…。
あの…お願いします…私、苦しくて…とても困っています…教えてくれませんか?
蘭鋳と神様のお話