雨に打たれて
有翼のスフィンクスに守られた玉座に座すは
創造と破壊の女神アスタルテ
その眼差しの下に数多の街々が
興っては斃れ
けれども人の涙など
雨垂れほどにも意に介さず
しかし母に愛されぬ娘は雨に打たれて笑うだろう
路地裏の石段、落書きに埋め尽くされたその場所に
優しく微笑む聖母マリア像はあった
敷石に打ちつける雨
聖母は祠の中で
家路を急ぐ人の群れを見る
しかし母に愛されぬ娘は雨に打たれて笑うだろう
排ガスの煙る交差点を見下ろすモスクの尖塔
神はそこにいて、かつそこにいない
恐ろしき世界から妻子を匿う父の背の陰で
母と娘は相争い傷つけ合っている
しかし
やがて母に愛されぬ娘は雨に打たれて笑うだろう
雨に打たれて