俺は誰だ?
僕は全てだ、私は誰でもない。
俺は自分の糞尿と血だまりで、滑って転んでひっくり返った、どっちが上で、どっちが下なのか、分からなくなった。
いや、それだけならまだいい!
俺は気を違えた、俺と世界と、本当はどっちが転んだのかが分からなくなった。
どんな言葉と哲学があれば、俺は正しく喋れるだろう。
そんな言葉は存在しない、何の意味もない事を、白痴の独白か、躁病の発作みたいに喋り続けろ、それが終わったら、死人のように口を閉じろ。
意図的に沈黙を沈黙させるなんて、不可能だ。
「いや、待ってくれ!」
「だが、俺は確かに生きている!」
それなのに、どうして墓穴に収まったりできる?
火炎のように燃え盛る生命を、一体誰が火葬できる?
炎に炎を足したところで、もっとよく燃えるのがオチなのだ。
それとも、炎に炎を支配させるなどという倒錯が、君たちの文明には可能だと言うのか?
科学にだってそれだけはできなかったんだ……。
いいか、災禍の後に残され、無残に転がされるのは僕の骨じゃない—君達の骨なんだ。
お前たちはどうして気が付かないんだ、この虚しさに。この世紀に八つ裂きにされようとしないのは何故なんだ?
それともこれは俺の妄想に過ぎず、俺が恐怖するところのものが、この俺を猜疑心に陥れているだけなのか?
僕を八つ裂きにしようとしているのは、他ならぬ僕自身なのか?
俺はユダヤ人ではないが、国家を知らなかった、そしてこれからも、国家を知る事は無い。
それどころか、啓示の数々が法の全てを抹殺してしまった。
君はこれを、≪絶望≫と呼び、憐れむのか。
残念ながら、もう俺には「国家」という言葉が何を意味しているのかさえ分からない。
だから、あんたの説法と、犬の遠吠えと、発情した猫の鳴き声の区別だって付きやしない。
だが、≪絶望≫と、「憐れみ」の意味までは忘れちゃいない、俺はその言葉を、暗殺者として、お前に差し向けた。
「自棄に陥ったならず者達」は、≪絶望≫と韻を踏み、より良く響き、跡形もなく消え去った。
そうだ、俺はあの、唯物主義民族共に伝わるように話しているのだ。
議論は平行線のまま、あんたに残されたのは暴力という手段だけだ。
これまでも、これからも……永久に。
ランボーがガリア人だしても、俺は民族でさえない! 野蛮人でもなければ、未開人でもなく、古代人でさえない!
俺の血管を駆け巡るのは血ではない、俺はもう血に縛られない、俺の血管を流れるのは海の水、川の水、唯一残された人工的なものと言えば酒くらいだ、理性さえも、俺を酔わせようと躍起になった。
俺は精霊だった。
俺は俺の名において殺した、虫けら一匹だってお前なんかの為に殺したりするものか!
「道徳家」と呼びたければ好きにすればいい。
俺は俺の名において苦しんだ、窃盗も殺人も、もっとみみっちい罪だって、お前なんかの為には、たったの一つだって背負ってやったりするものか!
俺が兵隊の服を着る時も、僕が女の服を着る時も、俺が囚人の服を着る時も、私が教師の服を着る時も、同じ事だ!
俺は、俺の皮膚に地獄の底まで付きまとわれた。
僕は生き永らえ、生きながら死に絶えた、生ける屍でさえなくなった。
俺が収まる棺桶の名は、≪生≫でもなく、≪死≫でもない、揺れ動き、何時までも燃え続ける炎だった。
棺桶は溶かされ、その煮え湯が、雨と共に落ちる場所には常に海が広がった。
この世からもあの世からも、俺は追放された。
俺の居場所は失われた、それとも、全ては僕の家だったのか。
「あんたは嘘を吐いている」
貴方は言った。
いやはや!君の失望は正しい!そして、それこそが僕が試みた事の正しさを証明した。
俺をこの場に釘付けにした力の正体を知りたいと願った。
重力か? 磔刑か?
なんだって構わない、いずれ僕はこの星を離れる事になるのだから。
復活なんてするまでもなく、僕は永遠だったのだ。
私達は不滅だったのだ。