割れた鏡の遺言
ー悲痛ー
それだけが、うつくしいと、
呟く、正直な、鏡は、
先刻、
割られました、ね、
気持ちのいい午後を、
ただの息苦しさに紛れさせ、
私は、何度も笑ったり、顔を上げたり、しなければ、いけませんでした
「せいかつ」
これ、
これ、ですよ、ね、
灰色の空間に投げ出されて
私は、うまく動けない、世界で、
動く、フリを、しなければ、いけない
聞こえないはずの言葉が
心臓を突き刺すのは、
私の、弱さ、です、
(それは便利な言葉ですが)
言葉が見つからないまま、
歪に笑うときは、
うまく呼吸ができないとき、です、
あなたの顔を思い浮かべます、
あなたのことばと、こえ、だけを、
たより、に、してみます、
より、センシティブに、なってしまった、わたしは、誰に向かって笑えばいいのか、わかりません、わかりません、
何度も手に取った、劔は、次の、瞬間、あまりにも、簡単に、砂に、灰に、なっていきます、
上手に、笑えないですね、
あなたのこと、思い出してみます、
あなたのこと、それすら、滑り落ちる、そうしたら、うまく、息が出来ませんね、
水底に沈みたくても、陸でしか、生きられない、そういう、生き物だから、うまく、いかないですね、
せめて、落ち葉の中にぐらい、安らげる所があるのなら、よかったです、
星占いが1位でも、世界は相変わらず暗いままですね、星占いが、照らすのは、私ではないのでしょう、
言葉は、滑り落ちて、ずっと落ちて、
そのまま、眠れる筈です、
朦朧として、崩れて、私は、歪なまま、隣人に、微笑む、
それで、パンを買っている、
ほら、
それが、きっと、
にんげん、なんでしょう?
割れた鏡の遺言