毛羽立つ
人並みにバランスをとって生きるのが苦手だった。些細なことで崩れて動けなくなる僕は苛立つ日々を過ごしている。
話を聞かない客に苛立つ。猫なで声を出す上から目線の女に苛立つ。なかなか剥がせない包装のテープに苛立って、切りすぎた爪に腹が立つ。電子メールの誤字も、どんちゃん騒ぎの中の軽口も、気づくと日の落ちた休日も、引っ掻いても収まらない肌の痒みも、全部全部に苛立って、そんなことでいちいち挫けている自分自身にも苛立っている。様々な何かが、一要因が僕の心と擦れあって、毛羽立った心が自らを主張しているんだ。劣化した心はクリーニングにでも出せば元通りになるだろうか。
今日も僕はひとりぼっち部屋の中、滲む汗にすら苛立ちながら、毛羽立った心をどうにかしようと焦る自分に苛立っている。
毛羽立つ
苛々しているときはただひたすら寝ることに決めています。