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彼は木と人間の区別がつきません

さとしはブナだね ゆうこはマツだね

彼の言葉を笑う友人らに私の心は冷えていく
友人には分からないんです
彼の素晴らしい感性を

私はなんて木ですか?
ベッドの中で聞きました

分からないよ
彼は答えました

こんな柔らかい木はないもの
彼は私の胸を触りました
乳首をツンと人差し指ではじく

どうしてですか 私は木です
木と言われたいのですよ

彼は困惑しています
僕だってはじめてだ 人間だと分かるのははじめてだ

木には根があり幹があり枝があり葉がある
君にはそれらの特徴が感じられない

君は人間だよ

彼は隣に座った女性にモミだと言いました
女性は驚いて席を立ちました

彼は人に対してスギだと言って友人を失いました
彼は満足でした 

私は遠くから見ていました

彼にまた聞きました
答えは以前と同じ

私は木にはなれませんでした
ずっと木にはなれませんでした

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-26

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