イエッサー! 一応策・・・・ 31

ひとかけらの幸 31

待たされること小一時間。
ようやっと面接順番が回ってきた。
十八番!ェーエっと・・・・アンディーっ!居ますか?
紙越しの顔から声が響く。

ハーイ!アンディです。
ひときわ大きな声を室内に放つ。

中に入って!ぼく、がんばってね。
30半ばくらいの女性係員がほほえんでそう云ってくれた。厚塗をしていただけに余計にシワが浮き出て見えた。どうでもよかった、親切な対応だった。

さあ、どーぞ、おかけください。
椅子が置いてあったから直ぐに座ることが出来たが、わざともっかい「座りなさい」と云われるまで座らないことにしていたのです。あの9歳の折のサクランボ作戦と似たことをしよ、と。

さあ!どうぞ!

ハイ!しつれいします。
着席した。

これで点を稼いだだろう。
一歩自分を低く見せた態度は好印象を与えたにちがいない!とアンディは内心で目論んでいたのだったのだが。

うぅ’’’ーん、君は16だね。わかいねえ・・・・。
二人の面接官のうち、前歯のそこ個々にヤニの付いた方の50代年配者・面接官の方が云ってきた。

はい、若いけど、幼くはありません、云われればサッサとどんな仕事でも上手くこなしてみせます。若さがウリです。幼い者にはそこまでは出来ないと思いますが!あぁ、云い過ぎてごめんなさい。
アンディは精一杯自己アピをわざとらしく長く演出してみせた。

君、明るいというか楽しげなキャラというか。し・か・し!だよ。
と妙に語尾に力を入れ返してきた。

・・・(‐”‐;)
とっさに構えた。どんな球を投げ込まれてもうまく打ち返してやるぞ、と心の準備をするアンディー・・・・・・・。

案の定、妙な語尾の後に連射が始まった。
誰でも口では何とでも云える。だいいち、その歳で仕事勤まるかなあ?最近口だけ達者な若造が多くてなぁ・・・。
前歯ヤニの面接官が眼鏡越しに意地悪そうな、いやイジワルそのままの言葉を投げつけてきた。ここでキレては元も子もなくなる、抑えるしかなかった・・・。

さらに連射は続いた。
口達者なやつで、この仕事、勤まったやつは、今まで、いない!
不採用だ!?不採用を示唆した返答とアンディは覚悟した。
が、はっきりと不採用との確答まで一応待つことにした。本当は、椅子を蹴って出て行きたかった、しかしジッと耐え成り行きを見届ける方が得策と考えた。

やはり待ってよかった。
君が日頃から大切にしているもの、大切と思っているものでもいいわ、あれば云ってみて。
今まで黙ってアンディを注視していた隣の30代くらいの面接官が訊(聞)いてきた。

信用です。信頼がすべての出発点だと思います、仕事も人間関係もこれが基本です。自分にはそうならないときも正直ありますけど、そうなるようには常日頃から努力はしているつもりです。していかなきゃ良い仕事も好い人間関係も出来なくなります。
キパッと云い切ってみた。

うぅん!仕事上での信用ってどんなイメージを持ってますかな?
その30代面接官は立て続けに尋ねてきた。

云われただけの仕事をしないで、相手の立場に立って仕事を成し遂げる。だいいち、その方が相手も喜ぶし、そうすれば信頼関係も深まるでしょ。あ、タメ言葉失礼しました。

君は本当に口が達者だね。うちはそういう調子者には向かないな。
またしてもヤニ面接官が横やりを入れてきた。

ギクッ、内心、折れた気持ち、グラグラに揺れる寸前のアンディ。

いや。期待できる、期待したいな。調子もんの言葉か?マジ言葉か?ぐらいは私にだって分かる。
割って入るように、30代面接官がヤニ面接官をさえぎるように云った。

イエッサー!ボス。
とそのヤニ面接官はイエスマンに変身した。上司だったのだ、ボスに迎合したのだ。

てっきりそのヤニ50代の方がボスかと思っていたが、30代の方がボスだった、よかたー。
アンディ、内心の揺れは止まった。

数日後、ピッツバーグ電報局から採否通知が届いた。破るように封を開けた。

イエッサー! 一応策・・・・ 31

イエッサー! 一応策・・・・ 31

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-24

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