神様と人

昔々、
神様と他の生物は同じ雲の上に住んでいました。
神様は、気性があらく、それらの生物をバランスよく、ちょうどよくめでる事が苦手でした。

ある日、ひょろひょろの生物がいいました。
“僕は人と話すのが苦手だ、後ろむきに歩けるようにしてほしい”
そういうと、神様は、彼をエビの姿に変えてしまいました。

また別の日に、鋏を持った生物が、
“僕は真正面から物事を見つめるのが苦手だ”
神様は彼をカニというほとんどよこにしか動けない生物に変えました。

神様は、彼らのような単純な生物が好きでしたが、
あまりにも単純すぎて、彼らが退屈をしていないか不安でした。
来る日も来る日も彼らを眺め、
次の生物の行く末をどうするか考えぬいていました。

神様は、わがままな自分の素直さと、思慮の浅さに困っていました。
あるとき、頭のてっぺんから黒い髪の毛の生えてきていた生物がいいました。
その髪は、神様の白髪とは似ても似つかない漆黒でしたが、彼らはいいました。
“神様、僕らは仮面をつける事ができます。
 この髪が伸びたとき、外見はあなたに近くなり、一人ひとりが個性をみつけて、お互いを思慮深く観察する事になり、
 ゆくゆくは智恵をつけ、あなたのようになる事ができるでしょう”

神様は、優しさのつもりで、彼らを前にあるけるようにしましたが
横にも後ろにも動きづらい彼らは、ひたむきに神様の真似をするようになり、
不幸や不運、目の前の障害にぶつかる事があっても、引き返す事ができなくなりました。

神様と人

神様と人

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-23

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