地獄

いつから君を、見ていたんだろう。

自分でも判らない。

 多分、距離が近すぎて、いつも傍らにいたから、

気付くのが遅かったのかもしれない。

当たり前すぎて、居なくなる何て事を、考えなかったから

幼い自分の考えに、苛立ちを感じる。

 もっと早くに気付きたかった。

 もっと優しくすれば良かった。

 もっと話せばよかった。

 “もっと”という言葉が溢れる様に出てくる。

 君の温もりも、声も、香りも、笑顔も、怒り顔も、

感じたい時には、当然の様に側にあった。

だから、急に僕から離れてしまわれたら、

思い出せないんだ。

 “当たり前”だった事を。

 君の贅沢に慣らされてしまっていたから。

 僕の中心が、寒くて冷たい。

 氷の湖の中で、僕の心が浮遊しているみたいに。

 ああ、そうか。

このまま、この気持ちを凍らせてしまえば

楽になるのかもしれない。

君がこれから歳を取れないように、

身体は老いても、僕の心が歳を取らないように。

待っていて。

時間という地獄を抜けたら、君に会えるから……

地獄

違うサイトにUPしていた作品です。
ショートショートというより詩に近いでしょうか。
ありがとうございました。

地獄

時間とは、人によって感じ方が違うものですね・

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-05

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted