そして・・・・チュッ//// 23 ひとかけらの幸
いまだ幼子、されど!
素足が、
清流の湯気に揺れ昇る、
まるで水晶、
澄み通る、その透明感、
手が震える思い。
そっとソフィーの裸足(すあし)を拭くアンディ、仕草初々し。
肩に手を添えるソフィー、顔に煌(きら)めく急流の光、揺れ。
女の子のナマ足を見るのは初めてだった。
好意を抱いていた相手だからこその感動だった。初めてだった。
それまで互い互いに独立してた姿が、清流に足を滑らしたその片方の足を拭いてあげたとき。どちらともなく急に互いの手を探し始める、手を繋ぐようになったアンディとソフィー。
ふたりの運命が動き出す。
それはそれは、まるで異星人、脚、顔、首筋、髪、口元、どれも、この世のものとは思えないほど、輝き増す。
10歳に届こうとするアンディ、二個上の12歳ソフィー、でした。
身長、ソフィーにいまだ届かず、紅顔の少年。
きっと、メロディーが流れたにちがいない、それを耳に触れ、互いを、互いの、思いに重ねたにちがいない。
A Red, Red, Rose(我が恋人は赤き薔薇)曲.
これは赤い 赤い薔薇のよう、
ああ 恋人は 赤い 赤い薔薇のよう、
それは6月に花咲く、
ああ 恋人はメロディのよう、
それは甘い調べ
原語:
O my luve’s like a red, red rose
That’s newly spring in June;
O my luve’s like the melodie
That’s sweetly play’d in tune.
by Robert Burns. 1759-1796
彼のノーベル文学賞受賞のロシア系アメリカ人・ボブディランはかつて、この曲を聴くと即座に感銘、涙をにじませるほどの歓喜、唇に謡い添えたと聞く。
他にもこの地特有な曲に、どれも共通して甘美な旋律を奏で詩(うた)であるが、誰でも一度は口にしたことのあるメロディが多い、「蛍の光」、政略結婚引き裂かれた二人純愛の「アニーローリ」、全世界ヒット中の「故郷の空」、スコットランド南東部の湖を歌った「ロッホ・ローモンド」、「愛しのアンデールのバラ」、「マイボーニ」、「故郷の空(ライ麦畠で出会った)」、「美しいドゥーン川の岸辺」、・・・・挙げれば枚挙にいとまがない。
何故これほどまでに世界中の人々に愛されるスコットランド・フォークソングとなったのだろうか? 自然とその下で織りなす人、これゆえしかないであろう。
美しい恋人に寄せる、素朴で、力強い、歌!
これに感動しない者は、世界何処であろうと!
きっと、ここ二人も。
アンディってウケるよね、手の形をハートにしてさ、わたしを見て来る子なんか初めてえー。
ぼくも初めてー、心臓が止まるかと思った、ピッカと現れるんだもん、あの光。
あの光って?
オーラー。
うまいね~。・・・・・ありがとう。色が白いから反射したせいだよ。
火傷したもーん!
大袈裟なんだから!
じゃ、見る?ぼくの胸の中を!
思わず顔を見合わせた二人、せきを切ったように、
ハッハハハハハハハハハー!!!・・・・・
たちまち10年来の友のような親しみとなって。
長―く、放って、戻り、やまびこさんのよう、朗々と山々を清流を草木を轟かす、くったくのない二人の笑い声が。二人だけの世界、今ここに。
微笑んだ、お空の雲さん、澄んだ空気さん、みな一緒の時のなかに漂う、謳歌してる。
二人手にし、人里へと向かい降りる二人の跡に、残したか、忘れたか、あの白い脚のふもとまで拭いた白いハンカチが、フワッと風で舞い上がり、あの急な清流に、そこだけ、ゆったりと流れ浮かびゆく。
ああ きもちいー!
空を 雲を 山並みを 見上げ 大きく息を弾ますふたり。
初々しく芽を拭き出す野草たちも、そう云う、そう弾む。
じゃ~、バイバ~イ、またねぇ~、と、その手を引き戻す、急に、おでこにチュッ、連鎖作用、アンディも、ほっぺに、ちゅっ。
身体恰好、いまだ幼子残すアンディ、精一杯な頬への思いだった。
ソフィーを送って行く途中、林を抜けた端辺り、直ぐ家の傍ならできなかった、きっと、いつキスするキスされる・・・・・・待ってたにちがいない。
そして・・・・チュッ//// 23 ひとかけらの幸