気分だけ歩いてきた
寂しい
本棚にもいなかった
書きたくて思い出せないひと
眼を擦り
唇 なぞる
この身体が愛撫されたあの街 時間
ひとを選んだが
選ばれなかったかも知れない
折り挟んだ四月
息を引き取っていたノート 書き留めた詩
走り書きは優しかった
かかとの擦り切れた音楽
躓く舗石を
別離ばかり歩いた
途惑わず歩いたかい?
遠くから遺失物が聞こえてくる写真
気分だけ歩いてきた
確かさはなかった
午睡の後は やさしい
気分だけ歩いてきた
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