ほうら シー編

大人たちの戦争

(これは、親父のための復讐だ!!!)

部下たちを従えて、気絶しているツルギを抱え夜を駆けていくほうら。
「母さん。小さくなったな…オレと同い年じゃないか」
月よりも美しい水色の髪をしている少女を抱えている枸橘ほうらの頬には、
ほんのり赤みが帯びていた。


その声に振り向けば、まだ青年になり切る前の雲隠れのシーが。
「美しいだろう。オレの妻は」


「…妻?バカを言え。こいつはオレの母で、四代目水影の妻だ」
「ならば何故こいつを浚った?こいつは規定で木ノ葉から出してはいけないと定められているのに」
「母を霧隠れに連れ戻すこと。そして、波紋一族の血継限界、天刑眼を奪うためだ」
「ではその天刑眼の能力は?」

「輪廻眼と似た力を持っていると水の国で聞いた」
「ハッまだぺーぺーのガキの浅知恵で我妻を浚うとはな」
「なっオレは四代目水影の息子だし!!!オレは里の規定とは言え親を不倫させたくないだけだし!それにあのお方が手伝ってくれてるし!!!」
「それがどうした?」

シーの余裕な瞳に揺らぐほうら。ツルギの事については一行に話さないのに。
横から仮面の男がほうらに口出しをしている様子だった。
「お前、誰だ?」

仮面の男はシーの質問には答えなかった。代わりに、感知タイプのシーを戦闘向きではないと窘める。
それは十分承知だ。ただ、それは戦場クラスつまりSランク急の任務での話。


「子どもの力など、知れてんだよ」
仮面の男は自分の左指を顎に充てると、シーのその瞳に右の人差し指を向け言い放つ。

「その真っすぐな目、昔のオレと同じだ。だがそれももうどうでもいい。もうすぐ九尾がやってくる」
「うずまきナルトだな?手出しはさせんぞ」
「ほうら、しくじるなよ…」
ほうらの目の揺らぎが消え、代わりに悪寒だけがシーの背に走った。
(ほうらの野郎、幻術に墜ちたか)
感知タイプの勘が言っている。これは相当ややこしい戦になると。
子どもたちだけではやはり忍びない。
シーはイルカと連絡を取り、闇の中に身を潜めた。
マダラの成をしていたオビトは、再びこの手にツルギが落ちるのを心待ちにしていた。
運んでいたほうらから譲り受け、アジトへ向かう。
しかし。
「たまには寄り道もいいんじゃねえの?影真似の術、成功」
ナルト達に合わせ、年齢を当時十三歳だった頃の自分に戻していた。
「ん?ねえシカマル。こんな奴アカデミーにいたっけ」
チョウジの質問にシカマルは答える。大体オレらが別のクラスの奴の名前なんて覚えてると思うか?と。
「そっか~シカマルの言う通りだね」
「とっとと倍加の術で潰しちまえよ」
「わかった」

「ちょっと待てェ!!!オイシイところだけもらいやがってお前らだけっ!!!」

Hand to doll

「あーまたウルセエ奴がきた」と遅れてきたナルトにシカマルは言い放った。
「そろそろチャクラ切れか?」
「え!?あ!ち、ちくしょう、計算してやがったか、意外と頭切れんな」
「そりゃどーも」
「ナルト!!!お前のせいだよ!!」
「なんだよチョウジ!!!おいそこのオレンジ色のゴーグル!!!オレとキャラ被りしてんじゃねえってばよ!!!ゴーグルというアイデンティティが似合うのはオレだけで充分なんだってばよ!」
「ハハハ。お前ホント最高、容姿はミナト先生譲りだな。性格は赤い血潮のハバネロそっくりだ」
(赤い血潮のハバネロ…?)シカマルとチョウジは思わず顔を見合わせる。
「ミナトって…オレのとーちゃん…」
オビトはスタスタとナルトに近づいていく。
「オレはうちはオビト!よろしくな。ナルト」
「オウ!なあお前ってば実はすっげえいいやつなんだな!ツルギちゃんってこ今追ってるんだけど、お前も仲間に入らないか!?」
「おいナルト!」
「なんだよシカマル!!!」
振り向けば既に到着していたいの、サクラ、サスケがシカマルとチョウジの横に並んでいた。
「信用できるのか、そいつ」
「大体、赤い血潮のハバネロって何?アンタのお母さんのあだ名?」
「いのちゃん!」
「…うちは一族は滅んだんじゃねえのかよ。なあ、サスケ」
「・・・?そうだ。だが次、それ言ったら殺す」
「確かにオレは故人だぜ。月の国の磁石場から来たんだ。授業で習ったことくらいはあるだろ?」
もちろんそれはオビトの嘘だが、
ナルト達をだますのには最適な細工だ。
案の定クエスチョンマークを浮かべるナルトとチョウジ。
「ちょっ、なんのために!?あなた幽霊なの!?」
「そうともいえるなあ。でもさ、母国がうちはマダラに脅かされてるって聞いて飛んできたんだぜ」
「それに!オレはこの通り写輪眼も使えるし、実績は享年どまりだけど中忍だった!戦力にはなるはずだぜ!」
いのの後ろに隠れていたサクラは、意を決したように前に出てきた。
「オビトさん…よろしくお願いします…!」
「サクラ ―…」
いのもどうやら、サクラのその行動に彼を信用する気になったようだ。
シカマルは月の国からわざわざ現代へよみがえった亡霊の話に耳を傾けながら、しょうがなく様子を見ることにした。
「アタシからも頼むわ!一緒に戦いましょう!」
「めんどくせえけど来ちまったもんはしょうがねえ…」
「おう!で、お前はどうするんだ?」
「オレはまだアンタの事を信じちゃいない」
「…安心しろよ!オレも、〝お前ら全員、足手まといにしか″思ってねえから」
「遅れたぁ~~~あ?」
「早いよナルトくん~」

「イクト!遅いってばよ!!!」
「イクト!酷いのよこいつってば」
「カイト!ミナモ!」
「え?」
「は?」
「それって、一世代前の木ノ葉の三波浪の…里を救ったっていう…」
その話を遮り、よろけるように登場したのは、ほうら。
「オレの母さんは…霧隠れの物だ…」
(そう…それでいい)
オビトの旋律に、ほうらは我を忘れていた。

ほうら シー編

ほうら シー編

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-12-13

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. 大人たちの戦争
  2. Hand to doll