さよなら
「ごめん、別れよ」
そう言ったのは俺なのに、いざ別れると寂しさが募ってくる。
別れた理由は俺が寂しいと我儘を言ってアイツを困らせたくなかったからだった。そんな理由で別れる俺はかなりの天の弱だと自分でも思った。
お互い忙しくて会話も出来ていないから寂しい、そばにいて欲しいのにそれが叶わない、もし我儘を言ってしまったら嫌われるかもしれなくて不安だった。怖かった。アイツに嫌われたら俺は生きていけない……。
でも、もう、2度と会えなくなるなんて思ってもなかった。俺の考えが甘すぎたのだ。
俺の代わりなんて沢山いる、探してくれる訳が無かったのだ。
ーーそっと指輪の跡をなぞるーー
ペアリングを付けていた小指は今は何も付けていない。アイツに貰ったペアネックレスも俺の元にはもう無かった。
アイツのものは何も無いのに目を閉じればアイツの匂いがする。
「小山…」
ねぇ、もしも、もう一度だけ……否世界はそんなに甘くない。俺はもう暗闇に閉ざされたままなのだ。
ーーずっと一人で暗闇にいるくらいならいっそのことーー
書斎のデスクの引き出しから紙と封筒を取り出し手紙を書いた。
手紙を封筒に入れ書斎のデスクに置いた。
俺は部屋を出てエレベーターにのり屋上に向かった。
夜景が綺麗だなとぼんやり思いながらふと、小山の横顔を思い出し首を振った。
もう、アイツは俺のそばに居てくれない、だからーー
「さよなら」
俺は夜景に足を踏み出した。
小山と残酷なまでに美しい世界を置き去りにして。
さよなら