ある名も無き詩人の人生
今日、私はふとしたきっかけでとあるおじいちゃんの部屋を拝見する事ができた。
おじいちゃんは、不在だった。
そのおじいちゃんはいつもカラオケでマニアックな懐メロを必死に歌っている。
机の上を見ると、ボロボロの本が置いてあった。
チラと見てみると、ボードレールの詩集だった。
驚いて他の本も覗いてみると、ゲーテ、ランボーの文庫の詩集、吉増剛造のチラシが置いてあった。
はっきりいって、そんな筋金入りとは思ってなかった。面白いおじいちゃんだとは思っていたのだが。
私と似ているなと思っていた。
古典の文学を読む所が私と似ている。
しかし、彼の場合は全て詩人。
神保町の古本屋にありそうなボロボロの詩集を机の上に置くおじいちゃん。
自分でも詩を書いている様だ。
おじいちゃんの名前が書かれたコピーで作った詩が置いてあった事があってそれはそういう事なのかと思った。
いつもはひょうきんで風変わりで誰もそんなインテリだとは気がつかない。
いつもボロボロの汚い格好をしている。そしてそのおじいちゃんは、お金があって何もしていない。
病気があり働けなくて仕事の経歴が無いらしい。親がお金を残してくれたとも聞く。謎が多い。
キャリアも家族も、何も持ってないおじいちゃんだった。
私も本を読むし、文章も書く。
そして私も彼と同じ病気を持つ。
私は同族を見つけた気分になった。
しかし、私の事を彼が知る事はないだろう。
将来私もあんな風に名も無いボロボロのおばあちゃんの物書きになるのかなとふと思った。
ある名も無き詩人の人生