世界テクテク旅 ヨーロッパ旅情編 - 『ベルゲン急行』

世界テクテク旅 ヨーロッパ旅情編 - 『ベルゲン急行』

1972年11月乗車したベルゲン急行の思い出。

数万年もの時間をかけて数千mも降り積もった雪が融けずに固まり、氷へと変化した氷河が自分自身の重みで、早くても一年間に数百mというスピードで山の斜面を下り、滑りながら底にある地面を深く鋭く削り取り、深いU字谷作ってゆく氷河による浸食作用によって形成された複雑な地形の湾、入り江であるフィヨルド海岸が見たくてフィヨルド観光の中心で港町ベルゲンを目指し朝8時10分ノルウェの首都オスロ発ベルゲン急行に乗車した。 

11月の北欧は寒い、スチームがきいた暖かい車内でノルウェ-が生んだ作曲家グリーはベルゲン生まれで、彼が作曲したペール・ギュントの森の朝のメロディーを思い出しながら列車は寒々とした針葉樹の中を走り、4番「山の魔王の宮殿にて」を思い浮かべる頃にはピアノの旋律のように徐々にスピードを上げ、高度を上げながら走っていく、そして次第に雪が深く、ノルウェ-国鉄最高点1303メートルを通過する時には激しい吹雪になり、暖かい車内の心地よさに、うつらうつらし・・・、目を覚ます、暗いトンネルを抜け、深い霧が晴れて、目の前に真っ白な雪景色の下にU字型に切り立ったフィヨルドの海岸の真っ青な海が開けはっと気付き、またうつらうつらしてベルゲン駅に降り立ったのは6時間40分後の午後3時前だった。

人口24万8000人のこの港町は2000年にヨーロッパの文化首都にも選ばれ、市内にはグリーグの家やグリーグホール、大学もあり、世界各国から音楽学を学びに来る留学生が多いと聞いていた。 北緯60度24分、東経5度20分に位置する割には、西岸海洋性気候の恩恵を受けて冬でもそんなに寒くなく氷点を下回らない為港は真冬でも豪華客船「サガフィヨルド」や英ニューキャッスル行きフェリー、フィヨルド観光船が行き交いにぎやかだったが、学校に行かなり留学生も問題となっているという事だったのでその辺りの事情を現地の老人尋ねたら「その解決は無理だ。」と言うので理由を聞いたらこの辺りは氷点を下回らないのだけに以前からどこも不登校との事だった。

世界テクテク旅 ヨーロッパ旅情編 - 『ベルゲン急行』

世界テクテク旅 ヨーロッパ旅情編 - 『ベルゲン急行』

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-02

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted