板挟み
困った、これはまさに板挟みだ。
うん、板挟みはつらい。
遮光カーテンの隙間から差し込む西日を眺めながら俺は苦悩した。
思い返せば、昨日いや今日の深夜のことだ。
急に幼馴染のエリに呼び出された。場所は夕暮れの公園。いつも明るく元気なエリがいつになく思い詰めた顔をして待っていた。
「あのね、ずっと言えなかったけど……キミが好き!」
エリはそう言って、俺の手を握ってきた。その手は少し震えていた。
「ごめんね、急に言われても困るよね……返事はいつまでも待つから」
小さなぬくもりがそっと俺の手からすり抜けて、そのまま走り去っていった。徐々に小さくなっていく後姿を俺はずっと見つめていた。
だが、その数時間後、今度はエリの妹マリに呼び出された。マリは俺の1学年後輩にあたる。場所は夕暮れの教室。
「ねえ、お姉ちゃんが先輩に告白したって本当? ……そんな、嫌だ、お姉ちゃんに取られたくない! 私と、私と付き合って!」
マリは俺の腕にしがみついてきた、小さな胸があたるのもおかまいなしに。
エリは幼馴染だけど、明るく真面目な優等生で、同級生からの人気も高い。正直女の子として意識もしていた。
けど、今年同じ高校に入学してきたマリも、わがままだけど天真爛漫で、なんかほっとけないと思い始めていた。
……どうしよう。
俺はどうしたらいいのだろう。
その時、深く物思いに沈んでいる俺の気分を台無しにする大変不快な音が響いた。
ノックだ。
「あの、ご飯、ここに置いとくから……夕べはちゃんとお風呂入った? それと駅でバイトの情報誌もらったけど、いる?」
無粋すぎる母親の声に憮然として体を起こすと、マンガ雑誌とゲーム雑誌とゲームの攻略本がいくつか床に落ちた。とりあえず、テレビのリモコンを探そう。
夕方のニュースをチェックしながら、母親がいなくなった頃に昼食だか夕食だかわからない食事を食べつつ、エリとマリについてじっくり検討せねばなるまい。
今日も本当に生きるのが辛い。
板挟み
お題を募集したときに「板挟み」ってテーマを誰かがくれた気がするんですが、多分1年以上放置してました。
無理くりかいたら我ながらひどいモノができました。