春なんて来なくていい

桜が咲き誇り
枝先に新芽が芽吹く頃 
君はここから居なくなる
時は止まろうとしないで風と共に過ぎていく
いつか願った夢など叶わなくていいから
今願う希望を声にして神よあなたに届けよう
春なんて来なくていい

犯した罪を償い
ようやくこの世界に慣れた頃
君と奇跡的に巡り会った
人生で初めて幸せを知った
高鳴る鼓動に真実だと伝えた
永遠の愛を契った

目を瞑れば浮かんでくる青空の下で笑う顔
耳を澄ませば聞こえてくる私の名を呼ぶ声
あたりまえの日々が涙でぼやける
自由に縛られて動くことも出来ない
誰かを憎んでいる訳じゃない
何かを壊したい訳でもない
ただ ただ春なんて来なくていいだけ

もしも明日死ぬのなら
今 これまでとこれからの分だけ
好きということを約束しよう
だけどもしも明日生きているのなら
今だけは病ませてくれないか 
光のない世界に

雪が降り積もり
朝に布団から出られなくなる頃
君はすぐ傍に居る
雀は寒さも気にしないで
電線から街道に囀る
学ぶことのない学校など行かなくていいから
今想う全てを形にして君よ彼方に届けよう
言葉なんていらない

命と引き換えに
何十億年後再び地球が生まれた頃
君と共に亡骸になっても
私は過去の為に剣となった
君は未来の為に盾となった
二人は愛と闘った

目を瞑れば見えてくるあの日と変わらない景色
耳を澄ませば聴こえてくる女神の名を呼ぶ讃歌
卒業への日常が涙でふやける
別れを恐れて話しかけることも出来ない
君を嫌いになった訳じゃない
何かを変えたい訳でもない
ただ ただ春なんて来なくていいだけ

もしも明日死ぬのなら
否 もしも明日も生きられるのなら
愛し続けることを誓おう
だけどやっと咲いた桜も散るのなら
色のない季節に

春なんて来なくていい

春なんて来なくていい

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-25

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