欲に頂きなし(サウナ編)

雪野 リラ

  1. 密室
  2. 尊敬
  3. 気遣い
  4. 刺青
  5. 恥じらい
  6. 常連さん
  7. ゆっくり
  8. ピチピチ
  9. 仲間
  10. どちら派?
  11. 指導
  12. マッサージ
  13. 明暗
  14. ある日の会話
  15. 同調
  16. 話の本質
  17. 男と女
  18. 言いたい放題
  19. 小悪魔たち
  20. 昔堅気
  21. 聞くに聞けない
  22. 5時から女
  23. 似てる人

密室

私が男に金を貢がせているという噂が流れていると知った。

私の前では誰もそのことには触れないので反論する機会もない。

真実が伝わり、噂は消えた。

ウワサを流した人も、それが事実無根だと弁明してくれた人もサウナ仲間である。

サウナという密室。

本人は蚊帳の外。

尊敬

誰かがサウナを出て、水風呂に浸かっている間、

その人の悪口を早口で機関銃のようにしゃべりまくる。

で、その人が戻ってきた途端にコロっと話題を変える。

その絶妙な変わり身の早さは尊敬に値する?

気遣い

背中を流してあげようか言うと、すでにやってもらったからいいと言う。

それから10分ほどして、背中を流してくれと言う。

さっき背中を流してくれた人では物足りなかったが、悪いのでその人が帰るまで待っていたと言う。

刺青

まだ20歳になっていないのではないかと思われる女性。

小柄で、華奢な裸体。

子どもっぽい笑顔。

背中一面に花の入れ墨。

「入れ墨のある方は入浴をお断りします」

という一文は無視して入浴している。

彼女が来たのはその1度だけ。

「あっらー、本物の入れ墨だね。
綺麗なもんだねぇー」

というのが、サウナ仲間の感想でした。

恥じらい

今まで、銭湯で倒れて救急車を呼んだという場面に遭遇したことが3度ほどある。

いずれも、男性客。

そのたびに、サウナ仲間で

「もし、倒れたらパンツだけははかせてあげようね」

と確認しあう。

とりあえず、まだ恥じらいの気持ちがあるということで。

常連さん

いつも行く銭湯が休みなので、違うところへ行く。

そこには、そこの常連さんがいて、そこのルールがある。

常連さんたちの監視の目に耐え、ルールを守り、サウナで汗を流す。

そんなとき、いつも自分が行ってるサウナ仲間に会うことがある。

大げさにも地獄に仏とはこのことかと思う。

ゆっくり

たまには、誰とも話をしないでゆっくり、サウナへ入りたい。

そんなときには、顔にタオルを被せて黙っている。

しかし、

「あら、今日はどうしたの?息苦しいの?体調悪いの?」

と、質問責めにあい、ゆっくりできないときもある。

ピチピチ

若い女の子が2、3人で来ることがたまにある。

サウナ仲間うちで、

「やっぱり、若い子の裸体はいいねー。
今時の子は足が長くて、おっぱいも大きいしねぇ。
ひゃっひゃっひゃっ」

という会話が交わされる。

なにも若い女の子好きは、おじさんたちばかりではない。

仲間

わざわざ自宅まで訪ね、

「サウナ仲間の○○さんは要注意人物なので深入りしないように」と

他のサウナ仲間に伝えに行く。

忠告なのか告げ口なのか。

親切なのかお節介なのか。

それでも、やっぱりみんなサウナ仲間?

どちら派?

汗を流し垢も落として、すっきり爽やか気分爽快!

だが、しかしその後に苦悩が待っていた。

替えのパンツを忘れてきた。

選択の道は二つしかない。

ノーパンかはいてきたパンツを裏返しにして使うか。

サウナ仲間でも意見の分かれるところ。

指導

こどもの日、小学生以下は銭湯料金が無料。

銭湯が初めてというこどもたちが友達同士でやってくる。

年に一度、サウナ仲間が「銭湯での心得」を指導する日でもある。

湯船に入る前に体を洗え、騒ぐな、走るな、泳ぐなetc.

自分たちの若いお母さんや優しいおばあちゃんとは違う人種に出会った子供たち。

それでも素直にいうことを聞くのは、こわいから?

石鹸をつけて、たわしでゴシゴシやってるサウナ仲間を見て、

「すごいねぇー!」
「つよいねぇー!」

と、ヒソヒソ話してたもの。

マッサージ

友人と温泉へ行った。

「アロエ入り塩」が置いてあったので、それで背中をマッサージ。

すごく気持ちいい~、プロのエステシャンのようと誉められる。

日々、サウナ仲間と互いの背中をマッサージしている成果が出たか。

サウナ仲間に報告するも、

「リラちゃん、まだまだっ!」と言われる。

まだまだって・・・・。

何を目指しているのか? 

最終地点はあるのだろうか?

よく分からないけれど、今日もお背中マッサージいたします。

明暗

サウナ室の電球が切れ、新しいものに変わった。

今までよりかなり明るい。

サウナ仲間うちで評判が悪い。

「こんなスポットライトを浴びたって、なにも芸はできません」

「明るすぎてシミがひとつ増えたような気がする」

「以前の明るさの方がシワが目立たなかった」

などと勝手な理由をつけ、元の明るさに戻させたことはいうまでもありません。

ある日の会話

「おっぱいを持ち上げて、その下をあかすりや石鹸で洗うというのを一度、経験してみたい」

「ああ、たなたのその胸じゃ無理よねー」

「でも、そのうちお腹の肉を持ち上げて、
お股を洗うことができるようになるわよ!
あっはっはっ」

仲間の一人が痔の手術をした。

本人は知られたくなかっただろうが、サウナ仲間には知れ渡る。

痔で悩んでいた別の仲間が、手術を受けた仲間のところへ話しを聞きに行き、一緒に病院へ行くことになった。

うわさ話もたまには役に立つ。

同調

子どもが若くして結婚したので、夫婦としてのこれから先が長すぎる。

離婚の確率も高いような気がして心配。

とサウナ仲間がいうのを

「これは縁だから!
先のことを考えていたら生きていけないって!」

と一言。

みんなで「そうそう」とうなづく。

話の本質

サウナ内のテレビで「石原裕次郎17回忌法要」の中継を見ながら、

「死んで17年も経つのにみんなに覚えられていてすごいね」

というところから話しは始まった。

美空ひばりもそうだしねというところまではまだ繋がりがある。

やっぱり有名にならなくちゃね、一曲ヒットを飛ばすだけで違う。

ちあきなおみ、山口百恵も活動してなくてもお金が入ってくるらしいよ。

そうそう、ヒット曲だよねぇ。

一曲でいいからさ。

みんな、今日から歌の特訓だよ! 

頑張ってヒット曲だよ!

と、だんだん話しはズレていく。

男と女

65歳になるスナックの現役ママ。

久々にサウナへ来たと思ったら、とてもお痩せになっていた。

当然、みんなから「どうしたの」「何があったの」と質問責め。

「元カレが危篤だと連絡来てさ。付き添ってたの。

元カレと言っても当時は不倫だったけどね」

その話で1時間。

「いろいろあるねぇ、男と女は。

年齢に関係なく、死ぬまでね」

サウナ仲間の締めのお言葉。

言いたい放題

サウナ内のテレビで兄弟デュオ狩○が熱唱中。

それを見ていたサウナ仲間たちがしゃべりだした。

「ホントにこの弟って昔から不細工だよね」

「年取ってますます不細工になったわ」

「人間ってさ、不細工でもその人の人生が反映して味の
 ある顔になるじゃない。でも、この人ってそれがないよね」

「そうそう、ただの不細工」

なぜ、そこまで言い切れるのだろう。

小悪魔たち

サウナ内のテレビで懐メロ特集をやっていた。

奥○チヨが「恋の奴隷」を歌っている。

50歳を過ぎているだろうと思われるが、

小悪魔と呼ばれていた当時の容姿そのままだ。

司会者が、

「今でも昔と全く変わらずお美しい。
奥○さんは毎朝、冷水を浴びるそうです」

と言うのを聞いて、

サウナ仲間が一斉にしゃべりだす。

「私も毎朝、水で顔を洗ってる!」

「あたしもさ!」

昔堅気

サウナ内のテレビでトンネルズが出演している番組を見ていて、常連さんたちの
会話が始まった。

「この、石橋って男、大っきらいだ」

「なんで?」

「だってさ、この男、結婚二回してるでしょ。
最初の結婚をする前から今の奥さんの鈴木保奈美と付き合ってたんだよ。
だから、最初の人と結婚して、子供できてすぐに離婚したでしょう。
そういうの、ホントに嫌なんだわ」

「そうなんだー」

「トキオの山口君も大好きだったのさ。可愛いからね。
氷川のファンだったけど、山口君のファンになったんだよ。
でも、この間、ずっと同棲してた女性と子供ができて結婚したでしょ。
ホントにいやだわ! 同棲なんてねぇー。また、氷川君のファンに戻ったよ」

「氷川も同棲してたりして・・・」

「いやー、それならもうファンやめるさ。
元々は山本譲二のファンだからいいよ」

「ああ、山本譲二は結婚してるからね」

「そうそう、ファンの人と結婚したからいいよ」

不倫も二回目の結婚も同棲もダメ。

なかなか厳しいサウナ仲間。

聞くに聞けない

目のクリッとした童顔は昔と変わらない。

多分、彼女は同じ高校の先輩だと思う。

彼女の名前は当時から知らないが、バスケ部のK先輩と
付き合っていて、卒業まで登下校は常に二人一緒だったので顔を覚えている。

若い体育教師が「高校時代に付き合っていて、結婚して
長続きしたカップルはいない」と言ったことに対して、

「そんなことはない! オレたちが証明してみせる」

とK先輩が反論したという話は有名だ。

その後、二人が結婚したのかどうかはわからない。

今、目の前にいるので聞いてみようか。

でも、人違いかもしれないし、結婚しなかったかもしれないし・・・。

とりあえず、周りの人に聞いてみる。

「高校の先輩のような気がするんだけど、彼女の名前は何ていうの?」

「Tさんっていうのよ」

「そうですか・・・。結婚されてるのかなぁ」

「結婚してた。
というかねぇ・・・若い時にご主人を交通事故で亡くしたらしいよ。
名字はご主人の姓なのか旧姓なのかわかんないけど」

亡くなったのはK先輩なのか、違うのか。

5時から女

彼女はいつも5時にやってくるので

「5時から女」と呼ばれている。

サウナの小窓から洗い場を眺めて、細かくチェック。

身体を洗わず、湯船に入った。
ああ、石鹸の泡が付いたままだ、しっかり落とせ。
髪の毛が湯船につかってる、髪を縛れ。
ずいぶん、太った締りのない身体をしているets

それがまた、キンキンと甲高い声で。

自分が5時から女と呼ばれていることを知り激怒!

以後、4時から来るようになった。

私たちは密かに「4時から女」と呼んでいる。

似てる人

サウナで隣に座った人の視線を感じる。

5分砂時計の砂が全部落ちた時、
「Kグリーンホテルに入ってる中華料理店のママ?」と聞かれた~!

よく似てるというので、「その方は日本人ですか?」と聞いたら

「中国人だと思う。あっ、綺麗な人だよ」と取ってつけたようにいうけどさ。

私のスッピンのどこをどうみても中国人には見えないと思うけどなぁ。

欲に頂きなし(サウナ編)

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