夢まぼろし

やけに明確な夢を見た。老人を助ける夢だ。
最近はそうゆうハートフルな話は避けてきたから、ますます理由がわからないが、記憶のようにハッキリと残り、未だに消えない。
目覚めたら、いつもの通り1人で、カーテンが明かりを遮ぎ切れず、カーテンの意味なんかないほど部屋は明るくなっていた。意識はハッキリしてたから、朝食を作ることにした。たまにはパンも良い。
冬が近づいてるのだろう、部屋は10度もない。
それでもストーブを点けて暖める暇もなく、出かけなくてはならないから、厚着をしてやり過ごす。
しょせん一人暮らしの男の朝食だ、パンを焼くのも面倒で、焼いたベーコンを適当にのせて、食べた。
美味いとか見た目がどうとかは関係ない。とにかく何か腹に入ればいいんだ。
昨日買って飲み忘れた缶コーヒーを飲んで、湯を沸かす手間を省いた。新聞を取りに玄関へ行くのは、面倒だから出かける時ついでに引っ張り出して、出先で読むのがいつもの行程だ。
そんな毎朝の習慣を終えても、消えずに残っている。夢が、夢の中で助けた老人が、あの暖かい笑顔が、消えない。
こんな歳になって、夢に左右されるようでは、まだまだ子供だったようだ。
でもどうせ、今日が終わる頃には、他の事で頭が一杯で、普通に、特別な事もなく忘れてるはずだ。
いい気分になんかなっちゃいない。心残りなんかでもないし、忘れてもなんの支障もない与太話だが、
今だけは。まだ朝の眠気が残る間だけは、忘れたくないと思った。

夢まぼろし

時々そんな気もなかったのに、急に寂しくなります。もっと誰かに甘えておけばよかったのでしょうかね。

夢まぼろし

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-23

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