審査員
「えっと……はじめまして、経済学部2年の青木啓太です。よろしくお願いします」
私は×の札を上げた。
「ダメ? 普通すぎるか。じゃあ……青木啓太です! アッキーって呼んでね! ってここでウインク!」
私は×の札を上げた。
「ダメ? じゃあ……青木啓太です。趣味はアニメのDVD鑑賞と、鉄道の写真を撮ることです!」
私は×の札を上げた。
「正直バージョンもダメ? じゃあ……趣味は、サーフィンと料理です! 得意料理はアルデンテパスタです!」
アルデンテはパスタの名前じゃないって。
私は×の札を上げた。
「大嘘バージョンもだめか! じゃあ……」
まったく馬鹿にしてる。
幼馴染の啓太が、初めて合コンに誘われた。だからって、私を呼び出して、「頼む! 自己紹介の審査員をしてくれ! 女で普通に話せるのはお前だけなんだ!」とは、どういう了見だろう。ご丁寧に割り箸とノートの切れ端で○×の札まで作って来られては断れない。
まったく……人の気も知らないで。
「幼児バージョンもダメ? じゃあどうすれば……? ああもう、めんどくさい! 行くのやめようかなー?」
私は○の札を上げた。
審査員