夕暮れの信号

夕暮れの信号

夕暮れに
朱華色、柑子色、淡青色が
空で抱き合い、混じり合い、広がっている

淡くて白い光が
私の心臓に響く

夕暮れの空は
いつも私を苦しくする

厭ではない
甘さにも似た苦しさが

心臓の奥底に燻る
私の残された灯が
空の色、空の規模、
この世界の憂愁に
共鳴している

夕暮れの空を見る度に
感じ入る心は
どこまでも空に引っ張られる
いつでも空に呼び寄せられる

名前をつけたら、
途端に嘘になる

ノスタルジーよりさらに奥
この空のずっと先にある
原始、起源、純粋な「はじまり」

そこに、私がいる

そう、確信する

夕暮れの、果ての
天空の、果ての
宇宙の、果ての

最果ての、さらに、遥か、

そこに、微笑するわたしがいる
はじまりを、迎える、わたしがいる

わたしが、わたしを、感じている

わたしは、抽象化された、感受性に、
わたしは、言語化に閉じられた、心の奥に、

わたしの、存在を、受信する

夕暮れの、空の色は、メッセージ、
電子信号、誰かの夢で、誰かの記憶、

わたしは、夕暮れの空に、苦しくなる気持ちだけ、ただ、ただ、在るが儘に、感じ、覚え、記憶していく

夕暮れと、わたしの、拙い会話、
いつでも、つながる、拙い会話、

苦しさが、わたしの、心臓を、何度も、生かす

苦しさが、わたしの、存在を、何度も、知らせる

夕暮れの信号

夕暮れの信号

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-19

Copyrighted
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