サイクル
サイクル
消え失せたものたち
目眩と共に目覚めた
夕方
空になった宝石箱を確認する
かつて入っていたものは何?
心の奥から響いてる
5文字程度の叫び声
早朝
言いたいことを探している
人の言葉が私の進路を遮る
圧縮された夢を見た
続かない物語を見た
深夜
筆者はいつも血を吐いている
読者はいつも涙を流している
救われない一生を歩んだ
聖者の目は世界を眺める
今朝
曇り空の下で君と出会う気がしていた
真実が地中から這い出る夢を見ていた
あ、く、む
あなたを失う夢を見た
あなたはいつだって
私のものではないけれど
決定的に、あなたを失う夢を見た
私は夢の中ですら、笑っていたの
「よかったね」って笑っていたの
ショックは雷みたいな衝撃なのに
私の表情は穏やかだった
あなたはとても明るくなっていた
私と楽しそうに話していた
ショッピングモールの、フードコート、複数あるチェーン店の場所、インターチェンジの側にある、大型店、他愛のない言葉の羅列に、お互いに微笑んでいて、その中で、いつかの、あなたの、現実での言葉と、現実での私の心情がリンクして、卒倒しそうになっていたの
夢から覚めてホッとしても
安心出来るのか、よくわからない感情のまま、あなたのことを考えていた、ただ、ただ、まだ、あなたの所在がハッキリしないなら、思うしかないって、布団の中で死にかけている
ただ、思うこと、
それすら、許されなくなる日が来てしまったら、死んだように、白い煙みたいに、生きるんだろうって思った
ただ、思った、
今日も生きる
幸福のない日々で、きっと微笑んで私は生きる
サイコロの目の詩
これは確率の話なのですが、
私は決して死んだりなどしません
これは確率の話、
あの人が、もしかしたら、私のこと抱きしめてくれるかもしれないって思うんです
だって
地球が出来て、私たちが生まれて、なんだか知らないまま生きてます、なんて、出来すぎた話ではありませんか
これは確率の話
あの人が、もしかしたら、私に「好き」って言ってくれるかもしれないって思うんです
だって
今日私が車にも引かれず、盲腸になったりもせずに、眠いまま眠いまま、起きて動き回ってるなんて、小説みたいではありませんか
これは確率の話
あの人が、私の手を黙って握りしめてくれるかもしれないって思うんです
だって
今日の天気が秋晴れで、昨夜の嵐が綺麗さっぱり消え失せているなんて、そんなこと、誰かの意思の介入なしに、実現するなんてあり得ないじゃないですか
これは全部確率の話なのですが、
私はどんなに寂しくても
私はどんなに寒くても
ちゃんと生き抜こうって
思うんです
私は決して死んだりなどしません
こんな確率の話が、
存在しているのだから
数学者の見る夢に、私が出て来たって
きっとそういうことがあるんですよ
だって世界は、あまりにも、出来すぎてるし、だって世界は、あまりにも、物語を渇望しているし、だったら、私だって、生きるしかないじゃないですか
いいえ、もはや、
生きるしか、ないんです
サイクル