5人。


10年ってのは短い

・・・なんてことをテレビに出てる人たちがいってました。

僕にとっての10年・・・

とっても長かったな。

僕の10年間は、

4人から教わったことの一つ一つでできていて。

目覚ましのかけ方

お味噌汁の作り方

箸の使い方

でも、一番僕が教わったこと。

・・・自分のごまかし方

これは、僕が教えてもらったんじゃない

勝手に覚えた技・・・。

今じゃ、とても役に立ってる。

人間関係なんて、結局単純で。

自分を消せば誰とでも付き合っていける。

・・・4人のお兄ちゃんは、自然に使いこなしてたから。



今日変な夢を見た。

自分の描く絵・・・どこかで見たことあって。

デジャブ。

変な夢に飛び起きた俺は

寝起き最悪な訳で。

頭もぼさぼさのままでソファに座れば

もう10年も前のことを思い出してみて。

俺と4人は変な関係で。

血の繋がりもなければ、

友達と言われても困る関係で。

一番背の高かったやつが、俺と同い年。

とっても勉強できて、でも運動できなかった。

一番上のやつは、勉強も運動もできて

すごく羨ましかった。

羨ましいから・・・恨めしいに変わってしまったこともあった。

でも、どんだけ恨んでも、全然届かなかった。

一番下のやつ、よく泣いてた。

すぐ泣いて他の3人が駆けてっていくことに俺は違和感覚えていて。

そんなやつ、ほっとけよ。

10年なんて短い。

恨みなんか・・・まだ薄れてもいないじゃないか。



二日酔いで横たわる僕は、微かに昨日の記憶を辿っていた。

居酒屋から後輩に肩を借りながらふらふら歩けば、

道路に寝転がっちゃったんだっけ。

呆れた後輩はあっという間に立ち去り。

ゆっくり立ったら、終電間際で

急いで走ったら、転んだ。

自分の体が落ちていく景色で見えてきたものは、10年前。

よく転んでたな、僕。

勉強はできたけど、体育の成績は平行線漂って。

同い年のちっこいやつ。

よくかけっこしては負けて、悔しかった。

一番下の末っ子みたいなやつ。

すぐ泣いて、可愛くて、悔しかった。

一番上のやつ。

勉強もできて、運動もできて、

・・・好きだった。

いけない気持ちを抱いていたことに素直になれば楽だった。

10年、長かった。

あの人を思い出せばなんでもできた。

当然気持ちをさらけ出してしまった馬鹿な僕は痛い目にあったが

全く苦痛じゃなかった。

逆に、違和感を感じた。

この人達は、人の感情にでさえも踏み込んでくるのか、と。



ギターをゆっくり弾きながら音程を探し

まだ四小節もできあがっていない楽譜を見れば自然とため息が漏れ

歌詞を見ては、頭痛がし始め。

・・・僕は、はっきり覚えている。

馬鹿らしいかもしれないけれど、俺はあの空間が大好きで、居心地がよくて。

母親の僕の思いまでも左右する命令にはうんざりしていて

父親の僕を睨みつけるような視線を考えるだけでも頭痛が止まらなくて。

結局、僕は両親のロボ以下の存在で。

でも・・・みんなは頼ってくれてて。

僕の一つ下の一人は、勉強はできるけどいつも転んでみんなに笑顔振り撒いて、可愛かった。

もう一人は運動がすごくできて、誰と走ってみても一番で、勝ったときの笑顔が可愛かった。

一番下の子は泣き虫でほっとけないくらい可愛かった。

僕の10年は・・・長かった。

みんなに会いたくて、早くこの生活をまた忘れたくて。

みんなだけだから・・・僕には。



僕は・・・。

5人。

5人。

  • 小説
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-01

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