スマートフォンの詩
罪状
私が、嫌いな人を
他の人も、嫌いだということを知るたびに、嫌いな人に、嘘偽りなく優しく出来ることは、悪いことだろうか
私は、結局人を見くびっている
それを悟られないように、怯えて暮らしている
私のことをみんなが嫌ってくれれば
私は私にも、嘘偽りなく優しく出来る気がした
スマートフォンの詩
朝起きて
昨日死んだ星の遺言を確認する
端末に映し出される稚拙な言葉
確認したら廃棄する
残しておいて
どうなると言うのだ
冷蔵庫から寿命を縮める飲み物を出して、迷わず飲み干す
生きるしかないのに、
生きろってメッセージを、
朝のニュース番組から読み取れず
死んでいる心拍数の
最期の声を再生してみる
がっかりするような音程で
私の朝は憂鬱なんて美しいものにもなれず、何にもなれず、掃き溜めみたいな部屋から体を引きずって這い出ている
この世の、何処かにいる、
憂鬱みたいに、
うつくしくなりたかった
木枯らし
人は人に
冬を押し付け合いながら
春を享受している
厳しい冬とは、
限られた人間に訪れるようで、
真実は、あの子の、死んじゃえって言葉一つで、消えてしまった
わたしも、あの子と、同じように、死んじゃえ、死んじゃえって繰り返した
誰に言ってるのかわからなかった
誰にも死んでほしくなかった
赤信号、横断歩道、舞う枯葉
解けたスニーカーの紐
躓くわたしのつま先
命の価値は、そこにある
流れる車と、流木たちの見る夢は
確かに、つながりあっている
わたしの、死んじゃえ、が、わたしに、跳ね返って、わたしの心臓を、突き刺した、
誰にも見てもらえないまま、
誰にも認められないまま、
わたしは、見えなくなった、星の光を、勝手に、勝手に、哀悼していた
スマートフォンの詩