レズレイプ探偵/雑な考察で挑む、怪奇の女性同性間淫行事件

国立離れ小島女子養護学園は、強度の男性恐怖症が一生治る見込みが無い女の子を、社会から隔離して保護する福祉施設である。
ある日、学園内で強姦事件が発生した。高等部生徒会長・羽根蓮華は、一年生の四十八瀬素直を生徒会室に呼び出した。素直は強姦事件を専門に手掛ける私立探偵少女だ。
「会長、事件の概要を説明して下さい。いつまで人の貧乳を視姦してるんですか。」
素直にクールに問いかけられ、蓮華は事件の経緯を話し始める。
「だってこんな時でないとあなたに会えないし、わたし下級生大好きだから………じっくり見ながら話すわね。事件が起きたのは今朝。正確には事件発覚が今朝ね。」
「その触覚を刺激するくらいねっとりした視線をそらさないと副会長に言いつけますよ?被害者が生徒会に届け出たんですか?」
「目力弱めるから言いつけないで!わたしたち生徒会役員が、裸で縛られてる被害者を発見したのよ。」
「それは穏やかじゃないですね………犯人は被害者を縛り上げて、強姦して立ち去った。被害者は縛られてるから服を着ることも出来ず会長にセカンドレイプされたと。」
「人聞きの悪いこと言わないで!わたしはあの子に上着を掛けてあげたし!」
「でもいいもん見れたと思ったでしょう?」
「仕方ないじゃない、あんな可愛い子の美乳見放題なんだから悦ばないはずないでしょう?この学園の生徒なら皆そうなるわ!あなただってその場にいたかったなーって思ってるでしょ!」
「いえ、貞操を無理矢理奪われて、哀しみに暮れている人を、視姦して楽しめる精神力を持ち合わせてませんので。」
「くすくす、その潔癖な性格、可愛い……興奮しちゃう。ねえ、誘惑してるの?」
「そんな風に被害者にも迫ったんですか?」
「さすがにあの状況でふざけた真似しないわよ。急いでロープをほどこうとしたけどほどけなかったから、職員室に助けを求めて、」
「待って下さい、最初から説明して下さい。」
「そうね。………今日の朝六時頃、わたしは生徒会役員二人と一緒にいつもの見廻りをしていて、第二教会に行ったの。そこで被害者を見つけたのよ、祭壇の前で床に倒れてた。天井から垂れたロープに両手を縛られてて、制服の前がはだけてた。」
「全裸ではなく、体の前だけ露出してたんですね?」
「なになに、想像して興奮しちゃったの?よだれがこみあげてきちゃった?」
「余計なこと言ってると本気であなたの愛人の副会長に告げ口しますよ。」
「わかった、真面目に話す!上着もワイシャツもボタンがはずされてるだけだったわ。でもブラジャーは無かった。下半身は完全に脱がされてたわね。スカートもパンツも靴も靴下も。そして脱がされた衣類は失くなってた。」
「犯人に持ち去られたんですか。悪質ですね。行き過ぎた恋愛感情が暴発してしまったタイプの性犯罪や、単純に性衝動が抑えきれなかったのとは異質のものを感じます。犯した後、晒し者にしようなんて……悪魔的です。犯人を野放しに出来ません、至急被害者から話を聞きたいのですが。」
「それはダメよ。被害者は心の傷が酷くて、特別病棟に入院してる状態だから会わせられないわ。一時は精神病寸前だったんだから。事件のこと聞いたりなんてしたらどうなるかわからない。それこそセカンドレイプよ。」
「しかしそれでは……」
「わたしが助けたからなのか、あの子、わたしには心を開いて色々話してくれたの。だからあの子がどんな目にあったか、わたしから話すわ。」
「納得は出来ないですけど、ひとまずは聞きましょう。」
「あの子が襲われたのは昨日の夜、十二時頃。」
「何故そんな時間に教会に居たんですか?」
「お百度参りしていたからよ。」
「意味がわかりませんけど。」
「ご存知無いの?百日間続けて深夜に教会でお祈りを捧げると神様が願いをかなえてくれるって学園内の伝説。」
「教会にお百度参り………ま、いいでしょう。被害者は何を願ってそんな面倒なことを?」
「それは言えないわ。」
「そうですか。ところでそのお百度参りですけど、流行ってるんですか?」
「どういうこと?」
「被害者の他にやる人がどれくらいいるのか知りたいんです。」
「まず居ないんじゃないかしら。お百度参りしていることは他人に知られてはいけないことになってるし、こっそりお祈りしに行くのを百日連続でするなんてほとんど不可能じゃないの。寝不足になってしまうってこともあるし。」
「なるほど、では被害者は夜中に必ず第二教会で一人きりになっていたと。犯人からしたら狙いやすい獲物ですね。」
「た、確かにそうね!」
「続けて下さい。お祈りをしに行った被害者は教会で何に出会ったんですか?」
「祭壇の前にひざまづいてお祈りしてる最中に、いきなり後ろからしがみつかれて口に布をつめこまれたそうよ。びっくりして振り向いたら、頭に恐ろしい仮面を被った裸の女の子が居たんですって!」
「仮面を着けた裸の女?想像するとギャグみたいですけど、実際真夜中に出会ったら怖いでしょうね。それからどうなったんですか?」
「どうなるも……無理矢理両手を縛られてレイプされたのよ。そして犯人は立ち去った。」
「ふぅん………?犯人の仮面は顔全体を覆ってたんでしょうか?」
「まあそうでしょうね。頭部をすっぽり覆ってたんじゃないかしら。」
「その点ははっきりさせておきたいですね。非常に気になるというか、不思議に思えることがありますので。」
「不思議なこと?何?」
「仮面が顔全体を隠してたなら、口も仮面の下ですよね。そうなると違和感を感じます。口を使えないと、犯人にとってはレイプの愉しみがかなり制限されるのではないですか?いえ、そうした行為においては口の用途が多いというか…………」
「ぷぷぷ………なんだかんだ言ってそういうことに興味津々なんじゃなぁーい……」
「五秒以内にその好色な目付きをやめないと告げ口決定ですが。」
「わかった!!もう茶化さないわ!……ま、まあ確かにそういう時に口を使えないのはとてもとっても残念なことね。けれど仕方ないのではなくて?犯人は正体を隠さなくてはならないもの。行為の際に一言も声を出さなかったそうよ。用心深い性格なのでしょうね。」
「そんなことはありません。レイプなんてする人間は軽率ですよ。犯人は計画性があり、それなりの知性があるようですが、レイプなんてハイリスクで取り返しのつかない犯罪をやってしまうのですから結局バカなんです。
話を戻しましょう。仮面に口が隠れてたかどうか、被害者に聞いて頂けますか?」
「聞いてみるわ。後でお見舞い行くから。」
「他にも聞きたいことがあります。特に気になるのは、被害者は具体的にどういった方法で犯人に抑えつけられたのか、ですね。先程の話ですと、力づくで組み伏せられたかのようですが。」
「ええ、その通りよ。」
「それはおかしいです。被害者は初等部の子ですか?これはとても大事な事なので答えて下さい。被害者の学年は?」
「あまり被害者の情報を明かすのは気がすすまないけれど……仕方ないわね。高等部二年生。」
「背丈が年齢の割に特別小さいですか?」
「いえ、普通よ。平均的な高さ。」
「つまり学園内で体格の最も大きい方ですね。そんな子を力づくでどうこうするなんて、誰が出来るんでしょう?実に奇妙じゃありませんか。この学園にはスポーツをやっている生徒が一人も居ません。体育の授業も無い。筋トレ等は校則で厳しく禁じられてる。当然、みんな力が弱い。普通に考えたら荒事なんて出来るはずが無いんです。高等部生が初等部の幼い子を襲うのなら体格差で上手くいくでしょう。しかし被害者は高等部生。犯人が教師でも純粋に力だけで思い通りにするのは無理です。先生方も学園で育った人ばかりですし。」
「言われてみればおかしいわね。けれど、人間の体ってそんな単純なものではないわ。心が性欲で満たされたけだもののようになっている時には、普段の何倍も力が湧き出るものよ。だから犯人も被害者をロープで吊るすことができたんでしょう。」
「被害者だってこれ以上無いくらいの緊急時なんですから普段には無い力が出たはずですよ。たとい犯人が半狂人的状態で、学園の常識では考えられない筋力を発揮出来たとしても、そう簡単に目的を達成出来ないはず。でもどうやら被害者は簡単に縛られてしまったようですね、会長の話ですと。この点、被害者にじっくり聞いてみたいです。」
「どういう風にレイプ犯に捕まったか細かく説明しろというの?そんなのとても聞けないわよ!」
「犯人が刃物など、被害者の反抗を抑えるのに使える武器の類いを持っていたかどうかだけでも聞いて頂きたいです。あるいは、被害者を無力化させる薬物が使われた形跡が無いか。」
「そんなの学園内で手に入れられるわけないでしょ!武器とか危険な薬物なんてどこにも無いし、刃物といえば包丁やカッターはあるけれど、厳重に管理されてて持ち出すのは不可能に近いじゃない。」
「しかしもし、犯人がそれらを持っていたとしたら、容疑者をかなり絞れます。現状では容疑者は学園内の全員です。外部の人間の可能性はありませんから、学園の生徒か教師の誰かのうちに確実に犯人が居ます。一応、確認しますが外部から侵入者は無いですよね?」
「有り得ないわ。学園のセキュリティは本格的軍事攻撃でなくては破れない。校則にある通り、男性の立ち入りは絶対禁止でいかなる場合も例外は認められないし、外部の女性も事実上、受け入れるのは新入生だけよ。学園内に外部者はいない。高等部生徒会長として断言するわ。」
「ありがとうございます。とても重要なことですので。学園の内外ではどうやら同じ女性でも筋力に非常な格差があるようなのです。柔道というスポーツをご存知でしょうが、外部ではあのような運動に取り組む女性もいるそうです。外部の女がその気になればこの学園の子なんてひとたまりも無くレイプされるでしょうね。しかし犯人は間違い無く学園の人間。高等部生を強引に縛り上げる力なんて持たない。ならば力以外の何かがあったはず。そしてそれが武器や薬物なら、犯人は教師の可能性が高い。」
「先生方が、学園に不測の事態が起こった時の為に武器を隠しもっているって噂はあるけど……あくまで噂よ?」
「教師でなくても、そういうものを入手できる人間は限られるわけですし、もし実際に何かが使われていたなら事件の真相解明に大きく近づけます。ですからこの点はどうしても被害者に聞いて頂かなくてはなりません。」
「わかったわ。あの子に負担をかけないように上手く聞いてみる。でも、武器とか薬物とかが何にも使われてなかったら?」
「なんらかのトリックがあるってことになりますね。力を使わずに同じくらいの体格の人間を制圧する方法。しかしまずは犯人が道具を使ったかどうかをはっきりさせることです。明日、また来ますので結果を教えて下さい。わたしは現場を調べておきましょう。」
素直は、その他にも幾つか被害者に質問してほしいことを述べ、生徒会室を出ていった。

翌日。朝早く、授業のはじまる前の時間に、再び素直が生徒会室を訪れた。出迎えたのはやはり生徒会長の蓮華ただ一人。
挨拶もそこそこに素直が質問する。
「被害者にわたしの聞きたかったことを訊ねて頂けましたか?」
「ええ。ただ、やっぱりあの子、事件のことをあまり思い出したくないみたいで、詳しく聞くことは出来なかったから、あなたが満足する報告は出来ないかもしれないわ。まずは座って。」
蓮華に促されて彼女の向かいの席に座る素直。
「要点さえ掴めればいいんです。謎を解くのに情報が足りなかったらまた会長にお見舞いに行ってもらいますが。」
「事件現場を調べた結果はどうなの?何か見つかったんでしょ?顔に自信が表れているもの。」
「いえ、それほどのものは無かったですね。ただ自分なりに事件の真相はわかった気がします。」
「まあ!!急にびっくりさせないで!胸の鼓動が落ち着かなくなってしまうわ………」
「……何故びっくりしたらそんないやらしい顔になるんですか?」
「だっていつも表情を出さないあなたの一瞬の得意気な顔が生意気だけど可愛すぎて色香が濃くてハートに強烈な刺激を与えるものだから子宮から膣口にかけて激しく蠕動しちゃってびっくりしたんですもの。エクスタシーは我慢したんだから気持ちが顔に出たのくらい大目にみてちょうだい。」
「お話はわかりました。では帰ります。事件は御自分で解決して下さい。」
「もう、セクハラ発言はやめるから機嫌なおして。でもどうしてほっぺが赤いの?そんな恥じらいを見せられたらわたし、けだものになってしまうかも。ふふふ…」
「ちなみに副会長を呼んであります。もう来る頃です。」
「今のは冗談だからね!忘れて!あと口外禁止だから!」
「慌てないで下さい、わたしのも冗談です。もちろんあなた次第で冗談でなくなる可能性は十二分にあることをお忘れなく。」
「一気に子宮が冷めたわ………事件の話に戻しましょ。真相がわかったと言ったわね?」
「現段階では正解の可能性があるというだけの仮説です。それをお話しする前に、被害者から聞き出せたことを教えて下さい。」
「ええと、やっぱり犯人は武器を持ってなかったそうよ。多分薬品も使ってない。あくまで力づくであの子を床に抑えつけたようね。」
「犯人がどのように被害者を捕らえ、縛ったかは………」
「さすがに聞けなかったわね。」
「まあそうでしょうね。わたしが被害者だったとしてもそんなこと思い出したくないですし。仮面が口をかくしていたかどうかは聞きましたか?」
「ええ。首から上全体がかくれてたって。」
「ふむ………やはりそうですか。頭までかくれていたと。仮面は、正体をかくすためだけのものではないのでしょうね。」
「ええ?顔をかくす以外に意味があるの?」
「そうですね、とても役に立つと思いますよ。まあ犯人もそこまで考えずに仮面を用意したのかも
しれませんけど。しかし恐らく仮面が顔だけでなく頭部全体をすっぽり覆うものなのは意図的な選択でしょう。犯行後に仮面は破壊するかどこかにかくすかする必要があるはずですが、そのためにかさばらない顔だけかくすマスクの方がいい。犯行の準備のためにも。ヘルメット状のものなんて扱いが不便です。敢えてそれを使ったのには理由があるのでは。」
「髪をかくしたかったからではなくて?女なんですもの、髪の特徴で簡単に誰だかわかってしまいそうだし。」
「そういう理由かもしれませんね。とりあえずこの問題は置いておきましょう。ところで会長に昨日、聞きそびれたことがあるのですが、学園では徹底して生徒に危険物を与えないようにしているのにロープは簡単に手に入りますね。」
「そうね。」
「職員室に届け出ればその場でもらえると聞いたので試してみたら実際入手出来ました。不思議なんですが、ロープも危険性があると思うんですが……首吊りとか、今回の事件のような使い方もあります。どうしてロープは生徒が自由に使うことを許されているんですか?」
「SMに使うからよ。」
「は?」
「そういう性癖の子には必要なものだから。ぷぷぷぷ……あなた、先生方にそんな子だと思われたわね。彼女がいないのはみんな知ってるから、一人でロープで体をイジメるんだと………想像したら色々むずむずしてきちゃっ…いきなり顔を殴ろうとしないで!!」
「よく避けられましたね。この学園でそれほどの反射神経は有り得ない。最初から疑っていましたがやはりあなたが犯人ですね?」
「ち、違うよぉ!」
「疑いを晴らしたかったら必要なことだけ話して下さいね。ロープを持っている生徒は職員室に問い合わせればわかりますか?」
「赤面するのやめてよ……どうしても興奮しちゃう……あ、真面目に話すから!えと、ロープ使用の申請を出した子はもちろんわかるわ。でもあんまり意味無いんじゃないかしら。ロープ持ってる子はたくさん居るのよ。わたしも持ってるし。生徒間で貸し借りもしてる可能性だってあるでしょう?」
「なるほど。無意味でもないでしょうがあんまりメリット無さそうでめんどくさいからやめましょう。」
「でもあなたと性的な趣味の合う子が見つかるわ。あ、もう真面目なことしか言わないから!わかってる、あなたは縛られて悦ぶ子じゃないわよね!乱暴やめて、わたし本気でビビリなの!」
「もうロープの話題を続けるのはうんざりなんですが真面目なことしか言わないのなら聞きます。聖堂の祭壇の上に横木がありますが、被害者の腕を縛っていたロープはそこから垂れていましたね?」
「言いたいことが次々思い浮かぶけれど我慢して真面目に話すわ。あなたの言う通りよ。ロープは横木から下がってた。でも横木に縛られてたんじゃなくて、祭壇の後ろの柱に縛られてたの。柱から伸びたロープが横木に渡されていて、その下のあの子に結ばれていたわ。」
「そうでしょうね、梯子なんかがあったとしても天井近くの横木にロープを結わえるなんてこの学園の生徒には無理でしょうし。ロープを投げて横木に引っ掛けるのが精一杯だったんでしょう。それでも苦労したでしょうが。しかし聖堂の扉はかんぬきがかけれますからね、殆ど誰も来ない夜なら安心して作業できる。」
「ちょっと待って、生徒って言ったわね?犯人は先生じゃないの?」
「……わたしは昨日、武器や薬物が犯行に使用されていたなら犯人は教師の可能性が高い、と言いましたが………実のところ、道具を用いない体力任せの犯行でも教師を怪しむべきだと考えていました。学園内で高等部の一般的な生徒とはっきり差をつける筋力を身につけるトレーニングを密かに行うチャンスを持っている人間が居るとしたら教師だけですから。」
「あくまで可能性でしかないけれどね。こっそり体鍛えてる先生が居るって噂は有るわね。」
「はい。しかし昨日のわたしの考えはいささかバカな発想でした。」
「と言うと?」
「事件の謎は解けました。」
「まあ!本当に!?犯人が使ったトリックがわかったということ!?」
「ま、生徒でも……それこそ被害者に体格の劣る下級生でも犯行は可能だと証明出来るだけですが。」
「な、なんですって!体が小さくても出来たの?!」
「会長、協力して下さい。今から犯行を再現します。わたしが犯人役、会長に被害者を演じて頂きます。」

生徒会室で蓮華は一人、黙ってモジモジしていた。素直は「準備をしてくる」と言って退室している。それから五分あまり、そわそわし通しの蓮華である。脳内にはハッピーな空想が渦巻いていた。
(レイプ事件を再現するってことは、わたし、辱しめられてしまうの!?いえ、でもあの素直さんがそんなことするなんてさすがに考えられないけれど……でももしかしたら……………ああ……わくわくして落ち着いていられないわ……!)
不意にドアが開かれた。
「お待たせしました。」
素直の声に顔を上げた蓮華は絶句した。戻ってきた素直は制服を着ていなかった。その幼い印象を与える身体に纏っているのは白い水着一枚であった。正確には足にはソックスと上履きを履いているのだが他に身を隠すものは無い。ほっそりとして可憐な腕と脚を惜し気もなく晒している。
「な、な、な、何故わたしにそんな姿を見せるの?!何かのおねだりかしら!?!」
嬉しい悲鳴を発した蓮華に、素直は常通り冷めた表情と声で応じる。
「犯人は裸だったという話なので、それに近い格好をしたまでです。さらにこれを被ります。」
素直は脇に抱えていたどこかの国の伝統工芸らしき頭部を覆うマスクを被った。
「これは博物室の隅で見つけたものですが、簡単に無断で持ち出せました。犯人もそうやって用意したんでしょう。」
「どうして愛らしい顔をかくしてしまうの……?ああ、でも気味悪いアニミズム文化圏の神っぽい仮面の下に水着の少女の体が付いているのもなんだか倒錯的で、それはそれでとても興奮させられるわ……!」
「邪魔にならない限りは一人で興奮していてもいいですよ。あと必要なのはロープの設置だけですが……シャンデリアが頑丈そうですね、あれに引っ掛けましょう。」
素直はロープも持ってきていた。それの先に結び目を作ると、その結び目を天井のシャンデリアに向けて投げた。何度かの失敗ののち、ロープはシャンデリアの上部のへこみにかかった。シャンデリアから垂れ下がった結び目を手に取った素直は、それを引っ張って重そうな木製の戸棚の脚に結びつけた。
「ここまでの作業はどうやらわたしでも出来ました。ということは大半の高等部生徒に可能でしょうし、中等部の子にもさほど難しくないでしょう。さて恐らく犯人はここまでは聖堂の扉にかんぬきをかけて行い、その後はかんぬきを外して入り口付近に潜んだ。結ばれたロープのもう一方の端は祭壇に近い所にかくしたと思われます。これで準備終了です。会長、この辺の床にひざまづいてお祈りして下さい。わたしが後ろから組み付いて腕を縛ります。会長は全力で抵抗して下さい。わたしの身を気づかって手加減などする必要はありません。力いっぱい振り払って下さい。そうでなければ犯行の再現になりませんからね。」
「危ないんじゃないかしら。わたしは非力でひ弱だけれど、あなただってあまり体が丈夫ではないし、わたしより小柄だし、怪我をさせてしまうかもしれないわ。」
「遠慮はいりません、被害者は恐怖のあまり必死に力を振り絞ったはずですよ。会長にも出来るだけの抵抗をしてもらわないとわたしの推理が有効か否かの証明が出来ません。これは実験なんです。この恐るべき凶悪犯罪の謎を暴くため、どうかご協力を。」
「そこまでいうならわかった、力いっぱい抵抗する。でも約束して。あなたも遠慮せず、犯人と同じくらいけだもののようにわたしを強姦するのよ。」
「顔を蹴飛ばしますよ、鼻血が止まらなくなるくらい。その上で今の発言を副会長に報告しますから。」
打ち合わせが終わると、蓮華はどこか不満気ながら素直の指示通り床に膝をついてお祈りのポーズをした。背後から素直の声が聞こえる。
「被害者がお祈りを始めたら、犯人は扉に再びかんぬきをかけたでしょう。そっとかければ音が立たないことは昨日実際にやってみて確認済みです。」
「ね、ねえ、わたし緊張してきたわ!上手く出来るかしら。それにいきなり後ろから抱きつかれるのってちょっと怖いわ!一声かけてからにして!」
「はあ、わかりましたよ。犯人は足音を忍ばせて被害者に近寄り、まず口に布を押し込みますがそれは省きましょう。ではいよいよ襲いかかりますよ。」
「待って!胸が高鳴っているわ!ときめいているのではなくて緊張感と怖さで!わたしとても臆病なのよ!こういうの本当に苦手なの!」
「それは結構なことです。その気持ちがあれば被害者のように抵抗出来るでしょう。いきますよ。」
直後、蓮華に温かくて柔らかい体が抱きついた。平素なら歓喜する所だが、追い詰められた気持ちになっている今は恐怖でパニック気味であり、殆ど無意識的に素直を振り払って立ち上がろうとした。
だがそれが出来ない。強引に逃げようとしても、どうしても体が右に傾いてしまい、身を起こせない。
後ろを見ると、素直は蓮華の右腕だけに絡み付いていた。だから蓮華は右側ばかりに重さを感じていたのである。
背中に抱きつかれたのなら体格差で蓮華が有利に違いないが、細腕一本と小柄とはいえ人間一人ではとても勝負にならない。そして、素直は小さいといっても蓮華が持ち上げられるような軽い荷物ではない。逃げるのは不可能だった。
蓮華はますます恐怖し、まるで殺されそうになっているかのような錯覚を覚えた。
理性では、相手は可愛い後輩なのだとわかってはいるが、目に映っているのは奇怪な仮面を被った水着の女という不審者。蓮華は死に物狂いでもがき、自由になっている左手で素直を叩こうとした。
が、素直の頭部は防護されている。首から下は完全無防備だが、しかし無防備に過ぎる。お上品なこの学園の生徒には、少女の素肌を攻撃するような蛮行はいかな極限状況といっても抵抗が強くて実質不可能である。もちろん水着一枚で覆われている部位だって同様だ。
結局、中途半端に素直を押しやろうとすることしか出来なかった。これでは腕を振りほどけない。素直は悠々と手にしたロープを蓮華の右手に結び、自分をぐいぐい押す左手にも結んだ。
そして蓮華から離れ、戸棚の脚に縛り付けられたロープを短くなるようにさらに縛ってピンと張らせた。
「会長、終わりましたよ。もう怖いことはしませんから、落ち着きを取り戻して下さい。」
素直は言いながら仮面を脱いだ。蓮華はふうっと息をつき、顔を赤らめた。
「ずいぶんと取り乱してしまったわね。恥ずかしいわ。」
「気になさらないで下さい、おかげでいい実験になりました。あ、ロープをほどきますから。……どうでしょう、この犯行方法は一つの可能性に過ぎませんが、生徒でも犯行可能だったことは証明出来たと言えませんか?誰でも入手出来るロープと、比較的簡単に盗み出せる仮面だけを用い、しかも明らかに会長より力で劣るわたしにやれたのですから。」
「確かにそうね、充分に証明したと思うわ。それで一番気になることを聞きたいのだけど、犯人は誰かしら。」
「わかりません。」
「え。」
「教師にしか不可能だと証明出来たのなら、犯人も突き止められたかもしれませんが、容疑者が多すぎます。当初は教師及び、体が被害者より大きめの生徒の中に犯人が居るかと思われましたが、推理を進めた結果、ある程度小柄でも犯行可能とわかってしまい却って容疑者が増えてしまいました。もう個人で犯人探しなんて手に余ります。」
「ではどうやって犯人を突き止めるの?」
「被害者の体に犯人の体液とか残ってたらなんとかなるんじゃないですか?何か理由をつけて全校で尿検査でもすれば、犯人を特定出来るでしょう。」
「そういう科学捜査的なのが出来る設備とか無いわよ!そんなやり方で済むならあなたに頼らないし!」
「そうですか。しかしここからは生徒会に努力していただかないと。わたしに頼りきりではいけません。わたしの役目は終わりましたからね。」
「終わってないでしょ!わたし達も頑張るから、犯人を探し出す方法を教えてちょうだい!」
「考えるのもめんどくさいです。自力でお願いします。一つの謎が解けたことでわたしは満足しています。今はこの気持ちに浸っていたい。帰ります。」
「こらあ!待ちなさい!事件解決まで逃がさないわよ!」
「大声を出さないで下さい、誰か来たらどうするんですか。水着姿の下級生に掴みかかっているところを目撃されちゃいますよ。では、失礼いたします。」

レズレイプ探偵/雑な考察で挑む、怪奇の女性同性間淫行事件

レズレイプ探偵/雑な考察で挑む、怪奇の女性同性間淫行事件

  • 小説
  • 短編
  • 成人向け
更新日
登録日
2017-11-13

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著作権法内での利用のみを許可します。

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