おかあさん。

繰る井莎鬼

どうしても触れていたいと思ったのです。
あれはあなたが捨てたもの。
かつての私だったもの。
どうしても抱き留めねばと思ったのです。
あれはあなたに愛されたかったもの。
かつての私だったもの。

なぜいきてるの。

なぜしんでくれないの。

汚泥に沈んだ花になど
誰が興味を持つでしょう。
翔ばなくなった蝶になど
誰が微笑みを見せるでしょう。

分かっています。

解っています。

それでもあなたは
あなただけは
私を愛してくれなくてはいけなかった。
あなたを愛する為に生まれてきた
この私を。

でもきっとそれも私の身勝手な欲望なのです。

わかっています。
わかっていますから。

幼子のままの私にあなた
どうか温かなスープをください。
からだが満たされ
こころも満たされ
きっと私はあなたを忘れていけるから。

温かなスープをください。
温かなスープをください。

愛などなくても、よかった。

棘の言の葉も拳も無視も
要らなかった。ただそれだけ。

温かなスープを私は今
あなたに頼らずに作って飲める。
それでも、私は。わたしは。

おかあさん。

おかあさん。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-08

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