アンモナイトの恋の詩
観測者の声
あなたを心から愛した日から
境界が邪魔だった
あなたと結ばれないとわかった日から
肉体が邪魔だった
あなたと愛し合えないと理解する程
わたしは純粋を求めた
より、純粋に、透明に、青く、涼やかに、あなたを、思いたくなった
空気や水のように曇りなき存在で、あなたのそばに、置いて欲しかった
境界も肉体も、真理の壁でしかなくて、わたしの、苦しみは、赤い文字で綴られていく
それは、恋文にもならない身勝手な観測結果だった
到達点を観測する
望遠鏡は濁っている
星はずっと輝いている
記録簿に書かれた数字、涙の跡、あなたに、どうすれば、会えるのか、わたしは、宇宙をめくる、星を板書する、
泣きながら、音楽を聴く、
まるで、そこに、愛があるみたいで、そうして、擦り切れながら、生きながらえた
アンモナイトの恋の詩
琥珀色した夕暮れは化石になって
僕らの約束は暗い空に浮かんでいる
星座みたいになっていて
ひとりぼっちで、アイスを食べる君、の、形をしている気がした
化石を割っても何も出てこなかった
分析し得る痕跡に、意味の無いことは、明白だった
僕らは秋晴れを迎えるために、
この軸の上で再開したのだ
それなのに、僕はひとりぼっちのまま、いつまでも「僕ら」と呼べないまま、薄気味悪い笑みで、世界中を困らせている、
現代病に呼吸器を当てる君に、僕は、ちゃんと「えらいね」って言えた
弱音吐かなきゃ、生きていけない、弱い僕を、誰も許してくれないけど、僕は、君を何度も褒めるよ、本当に言いたい言葉は、化石と一緒に砕いたんだ
どこかから聞こえるハッピーバースデーが、誰かのモールス信号だったとして、僕が抱える寂しさに、なんの作用があるのだろうか
全部、全部、物語になれない残骸ばかりで、ちゃんと分別しないで、全部指定ゴミ袋に入れないで、めちゃくちゃに捨ててみたから、明日は誰かに怒られるね
いつまでも、「僕ら」は、君で、僕で、自由ばかり約束されたこの世界で、化石の採掘に精を出す
この軸にいる意味は、誰かが分別して捨てちゃったんだ
アンモナイトの恋の詩