イニーツィオモンド
<No.1:トーロクカンリョーシマシタ> 世の中は絶望に満ちている。自分が求めたものは絶対手に入れることができないし、平和を望めば望む程、人間は争いを繰り返す。そんな世の中に少年は飽き飽きしていたし、一種の諦めのようなものも抱いていた。それと同時に自分は世の中に拒絶されていると感じていた。なにしろ自分は異質な何かを持っているのだから――――――。「なあ聞いてくれよ!」と後ろに座っている少年が明るい笑顔を浮かべながら自分に話し掛けてきた時、少年はそんなことを考えていた。
呼ばれて振り返った少年は明るい少年とは真逆の暗い顔をしている。
「…何だよ。」
少年は無愛想に答える。
「あのさ!めちゃくちゃ面白いサイト見つけたんだよ!」
そう言いながら少年はポケットから携帯を取り出した。はたして彼は今が授業中だと理解しているのだろうか。
見せられた画面を見て少年は言った。
「イニモン…よくある派生サイトだろ?何が面白いんだよ。」
「いいか、見てろよ。」
そう言いながら少年は十時ボタンの下を長押しする。すると黒で統一されたイニモンのロゴが下がり、テレビ特有の画面が表れた。
「ザーーーーーー」
「ただのバグだろ(携帯なのになんで砂嵐が…)」
突然起きたことに少年は少しぎょっとしながら言った。目の前にいる少年は涼しい顔をしている。「そこで通話ボタン押してみ?」
言われた通りにボタンを押すと文字が表れた。
[オメデトーゴザイマス。アナタハエイエンノイノチヲエルチャンスヲテニイレマシタ。 イニモンニトーロクシマスカ?ハイ・イイエ]
「…なんだこれ…?」
「なっな!すごいだろ?じゃあ登録しろよ。」
「ピッ」
言われた通りにボタンを押すと画面が切り替わり新しい文字が表れた。
「トーロクカンリョーシマシタ。ナオ、シレンハアトヲオッテオツタエスルノデヨロシク。」
「試練?何のことだ?」
「あっそれ俺も思った…!!」
「こら!そこ、何してんだ!!」
「あっやべ!」
明るい少年は慌てて携帯をポケットに入れた。
「(あいつってこういう類のやつほんと好きだよな…)」
少年は、ため息をつきながらそう思った。
今まで何度この友人にオカルト紛いのことを(無理矢理)やらされたことか分かったもんじゃない。そしてそれらはどれも噂が広がっただけの眉唾ものばかりだった。都市伝説のお決まりはいつも「友達の友達が…」だ。そんなものに関わらせられるこちらの身にもなって貰いたい。不意に視線を感じ、顔を上げると名前は知らない女子がこちらを見ていたが慌てて顔を背けた為、真意は読み取れなかった。彼らが後にこの世界にとって必要不可欠な存在になるということを人々はまだ知らない―――。
イニーツィオモンド