誕生日の詩
誕生日の詩
大雨の日、
濡れた地面から顔を出した少女
光る目玉はぎょろぎょろとして
周囲の景色を眼球に焼き付ける
少女はやがて、地面から這い出る
柔らかな土は少女の裸足を包み込む
少女は真っ白なブラウスに、真っ赤なスカートを履いていた、
泥は少女の衣装を汚さなかった
少女の目玉は暗雲を捉える
少女の足は走り出した
駆け上がり、駆け上り、暗雲を掴む
掴まれた暗雲は悲鳴をあげる
青空を見つけて、暗雲を投げ捨て、
走り出す、大声を上げて、走り出す、
青空を駆け上り、中間地点で、少女のアイライナーが、世界分断線を引く、
分断された世界が割れていく、
少女の故郷は崩落する
少女は分断線の上で眠る
何処にも走る必要のなくなった、
分断線の上で眠り続ける
赤いドレスの詩
理解が存在するのは静物だけだった
空転する時計の針は
あの子の心臓を掠めて
なにも知らない顔をして機能する
荒野の上でオセロに興じる私は
間違い過ぎて街を追われた身だった
あの子の心臓の色が赤いかどうか
そんなことにばかり気をとられる世間
吐き気はそこにあって
明け方は頭痛しか生まれない
細い足とか細い首とか
繊細なピグマリオンを愛する世間
青空に反響する雪の音
あの子は裸足で生きている
間違いを間違いのまま
愛することを許されている
私は間違ってはならなかった
私は正解を出さなければならなかった
あの子みたいに
裸足で生きてみたかった
誕生日の詩