日陰

なるべく人に隠れて生きたい
そう思ったから存在が邪魔で
なるべく死んだつもりでいた
心配する顔は馬鹿にしていた
哀れむ目の奥は濁っていた
周りから救いが消えていった
唯一の救いは僕が僕だと言えないことだった

海の底を描いて
深く沈んでいくことだけを考えた
木の陰を描いて
様々な攻撃から身を守る術を学んだ
朝の陽を描いて
何度も太陽を好きになろうとした
夜の月を描いて
実家のような安心感を覚えた

なるべく人から離れて生きたい
そう思ったから居る場所は限られた
なるべく人を殺してきた
車道を走る車は轢き殺した
歩道を歩く人は刺し殺した
周りから救いが消えていった
唯一の救いさえ何もなくなってしまった

空の遠くを描いて
高く飛んでいくことだけを考えた
社会の影を描いて
僕が生きていけない場所だと悟った
朝の陽を描いて
何度も自分を好きになろうとした
夜の月を描いて
していることに背徳感を覚えた

決して死ぬことは出来ない
だから生きていけるように
せめて今だけ弱音を吐かせてくれ

日陰

日陰

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-11-01

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