狂喜-2-
彼に話しかけられた。
掃除の後でゴミ捨てに行く途中だったのだけれども、彼は私の肩を叩いてきた。
振り向いたときは、手にしていたゴミ箱を落としてしまいそうだった。
とっさに頭に浮かんだのは
バレた、ということだった。
悪意ではないのだ。
彼の邪魔はしたくなかったし、驚かそうとも思ってなかった。
できれば彼が私のことを知らないで居てほしかった。
「重いだろ?ひどいな、女子に行かすなんてさ」
そう言った彼は、顔をくしゅくしゅにして笑いながら、
私が持っているゴミ箱を持った。
しばらく呆然として、それから急いで彼について行った。
女子。
この高校の、いや、全ての幼い女性に対しての
総称で呼ばれたことに驚いた。
私を他の子と同じ扱いをしてくれるの?
「実はさ、俺…その…」
ゴミを捨てたゴミ箱は、間抜けな軽さがした。
私は彼の言葉を聞き終わる前にその場を離れた。
ずるい。そう思った。
ずるいではないか、話しかけるのはルール違反ではないか。
怒られなかったことへの安堵感と
何かを失った虚無感が私を埋め尽くしていた。
狂喜-2-