友
友
今私は苦しい。胸の上に文鎮でも乗ったような苦しさ。でもこの苦しさは、誰にもわからない。気のせいとか、気分次第とか、軽々しく言わないでもらいたい。眠ることさえできないんだから。
精神的な問題と言われても、では、それを解決するにはどうしたら、いいか、は、全く教えてはくれないし、自分で考えろと言うなら、ヒントをおしえてほしいものである。でも、口に出していえば、バカとか、甘えているとどなられる。こうなれば、もう、自分なんか生きていても仕方ない気がする。
私は、フラりと外へ出た。みんな働いている時間だから、メールしても返答がなくて当たり前。そもそも、人間は働かないと正常でいられないと、私は教わってきた。うんたしかにそうだ。今働いていないから、わたしも、良からぬことをかんがえてしまう。だから、犯罪をおかす。うん、その通りだ。私は高校時代にそう教えられた。いま、病気になって十年近く経つが、いまでも思い出してしまう。まあ、仕方ないんだけど。
つまり結論をいえば、よい点数をとらなければ世の中は少しも楽しくはないのだ。
私は銀行に向かった。私は、亡き父母が残した貯金で生活している。父母が生きていたときはそれなりに楽しく暮らすことができたが、今は、ふたおやともない。どうせ結婚もできないし、こんな大金、持っていてもしかたないだろう。何より、小学校から、高校まで友達もない。若いときは、インターネットで何人か、友人はいたが、所詮ネットはネットであり、私が望んでいた、つきあいかたではなかった。
銀行の扉があいた。私はATMをそうさできないので、いつも窓口にいる。まあ、手数料がかかってしまうが、仕方のないことであった。というよりは、気にしていなかった。
すると、どどどっとおとがして、おばあさんが入ってきた。そして、いきなり窓口へ来て、こんなことを言った。
「すみません、孫から電話があって、どうしても500万円必要なんです。」
「ああ、それは、いまはやりの、振り込め詐欺というものでしょうね。」
と、店長がいった。しかし、おばあさんは耳が遠いらしい。
「はやりのなんだね!とにかく、孫のために、お金をだしてくれ。久々に電話がかかって来たと思ったらこれだもの、」
「いったい、何て言う風に、でんわが、かかって、きたのですか?」
店長はゆっくりいった。
「今大学生なんだけど、彼女が人工妊娠中絶をするから、その、費用を払わなければいけないと、かかってきた。」
「だからそれは、」
店長は説得しようとしたが、耳が遠いおばあさんには、全くわからず、ここがだめなら、他へいくといいだし、どんどんでていってしまった。
すると、おばあさんの財布から、何かがおちた。わたしは、思わずそれを拾った。
どこかの雑貨屋の、ポイントカードであった。裏を見ると、
「富士市川成島、、、浜本友」
とかいてある。川成島なら、私の家のすぐ近くだ。
私は、このカードをおばあさんに返さなければ行けないとおもい、自分の用は忘れて、川成島にいき、浜本という家をさがした。家はすぐわかった。
「やすお、今振り込んできたよ、500万円。これに懲りて、少しは勉強するんだよ。」
すると、電話の奥でこういう声がきこえてきた。
「何をいっているんだよ、ばあちゃん。俺のいっている大学はそこじゃないし、いま、勉強で彼女はいないんだ。」
「なんだね、もう一度いっておくれ。」
「とにかく、俺は、500万くれという、電話はしてないよ !」
「ともさん!」
と、私はおばあさんの家におもわずとびこんでしまった。
「ともさん!ともさん」
すると、台所から包丁を研ぐおと。台所にいくと、ともさんは、包丁で首を切ろうとしていた。
「ともさん、やめてください、自ら逝くことは、それだけはやめてください!」
私は自分の口からなぜこんな言葉がでるのか、わからなかった。
「だって、もう、財産を全て無くしてしまった。もう、あたしは、生きてる価値がない。」
「私だっておなじですよ。生きてる価値がない人間のひとりですよ。父母には、迷惑かけたまま、なんどお詫びをしても、足りないくらいですよ。働いてもいないし、何一つできませんでした。」
ともさんは、ボロボロとなきだした。
「たった一人の孫だけがわたしのいきがいだった。でも、娘たちは、わたしのことをきらっていた。もうにどと、娘も孫も、ここへは、来ないでしょう。」
淋しいんだな、と私はおもった。すると、ある考えがうかんだ。私の口座には、まだ、金がある。
「ともさん、よかったら、私と一緒に暮らしませんか?」
「えっ、、、」
「寂しい同士、いいじゃありませんか。私のマンションで暮らしましょうよ。明日、迎えに来ます。」
次の日、私は、友さんのいえに行った。友さんは、家を売り払う手続きをするため、わたしと、歩いていった。
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