僕らはゾンビ対策官 番外編 後編 相須三歩
ゾンビ殲滅局東京本部、対策5専用室……
「意外と普通ね」
相須はそう言いながら歩いていった。対策5の部屋は他とは違って小さな実験部屋がいくつもあった。しかし、外からは中が見えない造りになっているので中で何をしているのか全く分からなかった。
ガチャッ!
突然相須の横の扉が開いた。すると中から紙の束を持った男性が出てきた。
「あの人が伊中准高研究官だよ」
蒔村は北音寺の耳元でそう言った。
「蒔村、そちらの方は誰?」
突然伊中が聞いてきた。蒔村はあまりに突然で何て言おうか困ったがすぐにこう言った。
「新人さんだよ。対策5に移るっていうことで今案内してるところなの」
蒔村は出来る限りの真顔で言おうとしたが、何故なら笑いが出てしまいそれを押さえるため変な顔になっていた。
「まぁいいや。ちょっと郡山さんの所に行ってくる」
伊中はそう言うと、第三研究室の扉に鍵を閉めて部屋から出ていってしまった。伊中が出ていくと相須はすぐに第三研究室の扉を開けようとした。しかし、伊中が鍵をかけてしまったので開くはずがなかった。
「強行突破していいですか?」
相須はどうやっても扉が開かなかったので、北音寺にそう言った。しかし当然の事ながら北音寺は許可をしなかった。
「どうする?鍵が掛かっていて入れないが……」
「ちょっも待ってて」
蒔村は北音寺にそう言うとどこかに言ってしまった。そして少し経つと戻ってきた。手に1つの鍵を持って……
「予備の鍵持ってきた。これで入れるはず……」
蒔村はそう言うと持ってきた鍵で第三研究室の扉を開けた…… 第三研究室の中は机の上に変な液体が入った試験管等が置いてあった。
「これなんだろう?」
相須はそう言うといかにも危険そうな緑色の液体の入った試験管を手に取った。そして不思議そうに匂いをかいだ。すると少量であるにも関わらずとても臭かった。
「それゾンビ菌入ってるから液体に触っちゃダメだよ。触った部分が怪我してたりするとそこから菌が入ってゾンビ化しちゃうから」
蒔村がそう言うと相須はなにごとも無かったかのように試験管を元の位置に戻した。そんな中、北音寺は一人で黙々と捜査をしていた。
「ダメだ。スパイだと証明できるものはない。一回出よう」
北音寺はそう言うと研究室から出た。相須はもう少しこの研究室にいたかったが、北音寺と別行動出来るわけではないので渋々と研究室から出た。
「何かあったら協力するよ」
「分かった。その時は頼む」
北音寺はそう言うと相須を連れて対策2専用室へと向かった。するとその途中で副本部長室に行っていた伊中に出会った。北音寺は何も言わずに通りすぎようとしていたが、伊中はすれ違う時に北音寺にこう言った。
「自分は白ですよ……」
本当に一瞬だったが、間違いなく伊中はそう言っていた。もしかすると、北音寺と相須が研究室を捜査することを知っていたのかも知れない。しかし、北音寺は伊中の言っていた「白ですよ」と言う言葉が気になって仕方なかった……
対策2専用室……
「相須は席に戻ってろ。俺は少し時間がかかるかも知れないから……」
「はぁ~い」
相須はそう応えると自分の班の席へと向かっていった。しかし、北音寺は違った。F班専用席を通りすぎ、L班専用席で止まった。L班は柚木が班長の潜入捜査班だった。北音寺はその席にいた柚木にこう言った。
「柚木、今時間あるか?」
柚木はそう言われると腕時計を見てからこう言った。
「20分位なら大丈夫です。それと話ならここじゃなくて向こうでしませんか?」
柚木はそう言うと立ち上がった。そして個室へと向かった……
対策2、個室A……
「伊中俊…… こいつはお前らと同じ潜入捜査する人でいいんだよな?」
北音寺はそう言うと柚木を見た。本来、潜入捜査をする人は例え殲滅局の人間だろうと教えてはいけない。何故なら、その一人に知られることによって情報が拡散される事を防ぐためだ。なので、誰が殲滅局の潜入捜査官かは潜入捜査官達とそれをまとめる副本部長の郡山しか知らなかった。
「悪いけどそれは教えられません。それが規則ですので……」
当然の事ながら柚木は言おうとしなかった。しかし、これだけの事で北音寺も引き下がる訳にはいかなかった。もし伊中がスパイだったら殲滅局全体の問題になりうることだ。なので何としても黒白はっきり付けたかった。
「こっちもそれだけは教えてくれないと仕事にならないんだ。もしスパイだったらこの班だけでは対処出来ないんだ」
北音寺がそう言うと柚木は立ち上がった。そしてドアノブに手をかけるとこう言った。
「伊中は私達と同じ潜入捜査官よ。詳しいことは言えないけど研究員としているのです。私から言えるのはこれだけです……」
柚木はそう言うと部屋から出ていってしまった。しかし、北音寺にとってはこれだけの情報がかなり大きく見えた。これで宇土に
渡す報告書が書ける。それだけでいっきに全身の力が抜けるよな気がした……
次の日、対策3専用室……
「3人を調べたが白だ。一人事情の言えない奴がいたがな……」
北音寺はそう言うと宇土に報告書を渡した。そして自分の部下達の待つ対策2専用室に戻ろうとした。すると宇土がこう言った。
「一人事情が言えない人ってなんだ?」
宇土がそう言うと北音寺はこう言った。
「それは郡山さんに聞いてください。俺の権限では言えないので……」
北音寺はそう言うと対策2専用室に戻ろうとした。すると突然宇土が肩を掴んできてこう言った。
「まだ戻っちゃ駄目だ!とりあえず第一会議室に行ってくれ!」
あまりに焦っている宇土を見て北音寺は仕方なく第一会議室に行くことにした。このあと北音寺を含め、全ての対策官が驚く内容が発表されるのだった……
対策2専用室、F班専用席……
「あーあ暇だな~」
そこでは相須が暇そうに外を見ていた。しかし平和なものだ。外を見てもいつも通りサラリーマンがあちらこちらにいるだけで、ゾンビなど見えなかった。
「どうせ今回のやつも班長しかやってないんでしょ」
副班長の片原はそう言いながらパソコンをいじっていた。
「まぁそうだけど……」
相須はそう言うと自分の席についた。
「平和が一番いいと思うよ。ゾンビ何かと戦うより……」
相須の隣に座っている一ノ瀬はそう言うとF班専用の小さい冷蔵庫を開けた。そして中から一本のジュースを取り出し、それを相須に渡した。
「大変な事になったぞ!東京駅で奴等と戦うことになった!」
北音寺は息を切らして部下にそう言った。そして、この一週間後東京攻防戦が開始するのだった……
僕らはゾンビ対策官 番外編 後編 相須三歩
伊中俊(いなかしゅん)
准高研究官
武器……拳銃
この話は「小説家になろう」に本編と共に載せています!