その女の子は壊れたおもちゃで遊んだ。

英語の教材の例文からインスピレーションを得たもの。原文は表示していないし、大丈夫だよね。

　少女は遊ぶ。
縫い目のほつれた人形で。
片足のとれた鉛の兵隊で。
ビーズの目がとれ、肩から綿が飛び出しているクマのぬいぐるみで。
今日はみんなでピクニック。
向こうのお山でお弁当。
トコトコ　トコトコ。
ケンケン足の兵隊さん。ちょっとみんなに遅れてる。
兵隊さん。早くいらっしゃいよ。もうすぐみんなついちゃうわ。
私にかまわずお先にどうぞ。私はゆっくりついていくから。
それじゃあ、さよなら。お山のてっぺんで会いましょう。

先に着いた人形とクマ。
兵隊さんが来るのを待っている。
そういえば、とクマが言う。
今日のお弁当はなんだろな。
あら知らないわ。あなたがつくったんじゃなくて。
僕が、いやいや、君がつくったんじゃないの。
私じゃないわ。きっと兵隊さんよ。
背中に大きなリュックをしょっていたもの。
ああ、じゃ、きっと兵隊さんだ。
やっとのことで兵隊さんが登ってきた。
ふう、やっぱり片足に登山はきついなあ。
こんにちは、兵隊さん。早くお弁当を出してちょうだい。
そうそう、僕たちお腹ぺっこぺこ。
えっ、君たちがつくったんじゃなかったのか。
えっ。
ちがうわ。
なんのことだ。
君じゃないのか。
あなたじゃないの。
僕じゃない。
おもちゃのけんかが始まった。
あなたが遅かったんだから、あなたがもってくるべきよ。このウスノロ。
なんだと、それじゃ、人じゃないやつがつくるべきだ。人は偉いんだぞ。
なんだって、君たちだって体がボロボロで醜いったらありゃしない。
おもちゃのけんかはしばらく続く。

しばらくたって、
ごはんよぉ
と声がした。
はあい
と少女は返事して、
壊れたおもちゃは喧嘩をやめたとさ。

煮るなり焼くなり、ゴミ箱に投げるなり、おすきにどうぞ。